壁の言の葉

unlucky hero your key


 そうか陽転思考っすね。
 うっかり忘れてました。
 というかブログにしたためた記憶が、とんと無いですわ。
 マダオさん、ありがとうございます。



 これは、
 かつて英会話スクールと教材の営業をしていたときの、社員教育によるものだったのだ。
 まあ、当時この営業のうるささは、つとに有名で。
 あまりいいイメージはなかったかと。


 すまぬ。


 思えばケータイがない時代ならではのものだった。
 アポ取りの営業トークは、みなさんの固定電話にかかるわけで。
 よって現在のケータイのように、先方の名前がディスプレイに表示されることがなく。
 出てみるまで先方が誰なのかわからないと。
 我々はそこへ付け込んでいたという次第なのよ。
 迷惑がられることも少なくはなかったが、
 時代は国際化の波がどどどっ、と押し寄せはじめたころだ。
 そこに必要性や、ステータスを嗅ぎ取った人たちには、ありがたがられたこともあったりして。


 それはさておき。


 この仕事、完全歩合制だったのです。
 断られて、断られて、
 やっとこさっとこアポとって、
 と思ったら、すっぽかされて、
 ようやく会ってプレゼンして、
 契約まではいかないのが連続して、
 どうにかオーダーをゲットしたと思ったら、即クーリングオフを喰らって…。
 そんな日々を繰り返していると、その月の給与に響いてくる。
 すると知らずに悲観的になって、電話の対応が後ろ向きになっていく。
 声に自信が失せて、トーンが暗くなると、取れるはずの客までが遠のいてゆく。
 それで自滅するなら、まだいい方だ。
 同じブースの中、同僚と顔を突き合わせてやっているわけだから、ひとりのネガティヴが、すぐに周囲を引きずり込むわけ。
 蟻地獄のように。
 会社としては、その負の連鎖を食い止めるために、これを教育したのだと思う。


 にしても、
 そんな経緯はいいのだ。
 経験は、たとえそれが負の性質であっても、美味しく再利用するべし。
 そう考えれば、日常でも活かせるんじゃないだろうか。
 今日思い返して、あらためて思った。要はこれ「ノリツッコミ」であると。


 よくテレビでやる実験企画に、こんなのがある。
 関西の人は、見知らぬ相手でもボケをふれば、のると。
 たとえば、すれ違いざまにいきなりおもちゃの刀で斬りつけると、
「うぉぉぉっ、やーらーれーたー」
 大袈裟にリアクションしてくれたり。
 アンケートの記入をお願いしてチクワを渡せば、
「これめっちゃよく書けるわあ」
 など。
 まずは、のる。
 ボケをふられたら、それを活かすノリを瞬時にみつけてリアクションするでしょ?
 あのノリを、アンラッキーに活かすのが、陽転思考といえるのかもしれない。


 陰を陽に。
 ネガティヴをポジティヴに。
 残り物を、御馳走に。


 会社を解雇になれば、
「そうそうそう、ちょうどよかったわ」
 ともかくも、のってしまうと。
 んで、のりつつ考える。
 とりわけ「そうそうそう」のとこで模索してやっつける。
 して、いざポジティヴに。
「充電のチャーンス!」
 とか、
「もっといい会社があるっちゅうこった」
 とか、
「この経験はいいコヤシになるぞ」
「未体験の職種を覚えられるって、得じゃん」
「きっと次の職場で新たな出会いが」
「おかげで職のありがたみを再確認っ」
「一か所にしか居なかったひとより、沢山の人に会えるじゃんか」
 などなど。
 むろん失恋にも、活かせるし。
 不幸だろうが、不運だろうが、知恵をしぼって意地でもポジティヴ化するのだ。
 ネガティヴかましてても埒の明かない問題は、これで片っ端からやっつけようと。
 そうのたまっていたくせに、闇生。この度の体たらくでござった。


 まずは自分を救わねば、誰の力にもなれないのだ。


 とはいっても、
 今のところは、まだ眠りが浅いのよ。
 ので、今日はまたウォーキングをやらかしてみた。
 疲労と引き換えに、睡眠をいただいちゃいましょうという魂胆である。
 いつもと違うコースを、行き当たりばったりに突き進むのだ。
 すると、ひょっこり神社に出たので、ついでにお参りを。
 トータルで一時間半か。
 それでもまだ一人が怖いので、入浴後にアパートを出る。
 ともかくも新宿に。
 何か食べなくてはと、歌舞伎町で立ち食いのカレーライスを試す。
 歩いたせいなのかうっかり完食。自分に驚く。


 食後にさまよって映画のプログラムを眺めるが、まるで気が乗らない。
 それでふと、思ったのだ。
 靖国神社に行こうと。
 きっと近所の神社に参拝したのが残像になって、頭に残っていたのかもしれない。
 これで二度目である。
 なにも神頼みというつもりではない。
 けれども、神社は誰にでも門戸を開いてくれるのだ。
 参道では今日、フリーマーケットが催されていた。
 緊張しつつ参拝を済ませ、
 せっかくだから今回は遊就館にも足を向ける。


 源平時代から、信長・秀吉の戦国はむろんのこと日清・日露・大東亜戦争までの史料や武器がずらりと展示されてある。
 寝不足で頭がぼんやりしているから、それら解説のすべてに目を通すのは、つらかった。
 しかし、それら戦争の歴史を通り抜けていくと、最後に、大東亜戦争で散った英霊たちのあどけない写真が迎えてくれる。
 おびただしい、その数。
 その圧倒。
 そして、彼らが遺書に残した声の強さ。


 あれを見ると、私ごとで凹んでるのが、アホ臭くなるね。
 泣けてくる。
 よっしゃ、気を張っていこか。






 ☾☀闇生☆☽


 あたしの小さな陽転。
 おかげで酒を遠ざけて久しい。
 もともと美味くて呑んでいた酒ではなかったから、まさに、ちょうどよかった。