壁の言の葉

unlucky hero your key


 この状況で、
 なおかつこの雨の中、
 唯一メールの送ることのできた高校以来の友人が、会いに来てくれた。
 あいかわらず行動が早くて、恐れ入谷の鬼子母神
 こちらの無沙汰にもかかわらずのことだから、まことにもって申し訳けねえっす。


 合わす顔もないというのに。


 彼は俺から見れば成功者であり、
 努力家であり、
 瞬発力に優れ、
 かつ、気質としてのギャンブラーを心に飼ってもいる。
 あたしに無い部分をぜ〜んぶもっている。
 いや、自力で身につけてきた男だ。
 んが、そんなわけで
 そのぶん修羅場や試練を、さんざん経験してもおるわけで。
 そのお話を拝聴させてもらっただけで、なんだか、少し胸の奥が和らいだような気がする。


 かたじけなし。


 やっぱ直で合って、
 めんとむかって言葉を交わすということは、重要なのだ。
 いや、この時代だ、それを需要と言いなおそう。
 具体的な解決はなくとも、言葉に作用した胸の奥の何かが、解決を求めて方向を模索し始める。


 うんにゃ、始める。


 差し入れにコンビニの握り飯をくれた。
「何か食わなきゃ」と。
 とても喉を通りそうにもないのに、ゆっくりと時間をかけて話しているうちに、どうにかふたつ食べることができたよ。
 こうしてみると、
 ふだんモニター越しに目にする言葉の、なんと非力なことか。
 それをブログで言うなっつう話だが、
 シンプルでも、
 そしてたとえ脈略がなくても、
 生には敵わんわ。やっぱ。
 その言葉の強さもまた、彼の背景に蓄積されたリアルによるのかと。


 ともかくだ、
 

 不安に陥っていてもしょうがない、ということは頭ではわかっているのだ。
 なのに、頭とはうらはらにそれにおびえてしまう心身。
 これには特効薬はない。
 けれど、少なくとも言葉は、殊に直で投げかけられる言葉は、必要不可欠であると確認した。


 感謝










 どうか俺の言葉も、いつか誰かに届けっ。



 ☾☀闇生☆☽