壁の言の葉

unlucky hero your key

子供と童。

BuggeWessletoft/It’s snowing…



「雪だ」
 と聞いて、はしゃぐのが童心で。
 ゲンナリするのが大人の、子供な心だ。
 天候にゲンナリしたところで詮ないことくらい、繰り返し実習してきたはずだもの。
 だども、
 にもかかわらず、
 なにかにつけて天候を憂うのだな。あたしたちゃーよ。


 『天災』
 という噺がある。
 何にでも喧嘩をふっかける短気な主人公が、天災には敵わないことを知るという。
 むろん、これは落語だから、そそっかしい主人公のナマ悟りは、受け売りの域を出ず。
 失敗をする。
 なるほど、人間、一朝一夕に人生の達人にはなれんのであーる。


 さて、
 明日は雪、と聞いて、はしゃいでしまった闇生の童心。
 ならばと、
 BUGGE WESSELTOFTのソロ・ピアノアルバムを用意しておいた。
 『it's snowing on my piano』
 十年ほど前、新宿の丸井の地下にあったVerginで衝動買いしたものである。
 ジャズコーナーの試聴機で、熱い手書き推薦文つきで紹介されてあったのだが、これがガチガチのジャズではない。
 いってみりゃアンビエント
 表題曲の導入部に入れられた雪の音に。
 いや、氷の結晶が舞い落ちてくるイメージのS.E.に。
 まず時を止められた。
  
 
 雪深い山の静寂に抱かれて、かさこそと木々の葉をくすぐる雪に、じっと耳をそばだてているような。
 言葉少なに一音一音、丁寧に置かれていくピアノの調べは、一切の無駄を回避してゆく水墨画の筆づかいのようで。
 そこに深い思索はあるが、主張はない。
 

 こういうのを流して過ごす雪の一日というのは、また格別だろうと。
 朝から窓を開けては外をうかがい、今か、今かとやっていた。
 なのにこの雨だ。
 待てども、待てども、雨っ雨っ雨っ。
 それが、いまや嵐となって吹き荒れているではないのっ。


 とまあ、


 ないのっ、
 と憤るこの闇生の鼻息こそが大人の、子供な心なのであーる。
 めっ。

 



 ☾☀闇生☆☽