ほぼほぼ衝動的にナベサダをポチる、の巻。
十歳離れた兄が当時よく聴いていたのが『カリフォルニア・シャワー』『モーニング・アイランド』と『オレンジ・エクスプレス』。
これらを三枚まとめてポチったったのだな。
発売が78年から81年にかけてのこと。
今にして思えばジャズ、フュージョンのアルバムにしては相当ヒットしたのだろう。渡辺貞夫と彼の音は、ざっくりとひっくるめて『ナベサダ』と呼ばれ、当人もCMなどに露出してタレント化してもいたのだから。
あたしはと言えば、当時小学校高学年。
それはそれは反抗期前夜祭のようなもので、
古きを憎み、新しきに憧れるというブルーなおケツも丸出しに、どっぷりとYMOとその周辺の音楽にはまっていた青二才。
フュージョンなんてもんはアレだ。演奏のジョウズさをひけらかし、汗かいて競い合う、当たり障りのないさわやかな音楽としか解釈できずにいたのだな。
しかし、十歳も離れた兄が繰り返し繰り返しこれらアルバムを家のプレーヤーで流しやがると。
当時交際していた遠距離在住の現妻に送るのだといって、カセットのメタル・テープだかなんだかへの録音に精を出していたのだぞと。
有体にいって、知らずに刷り込まれていた、のだろう。
そのメロディは、おっさんになった今でも時折口をついて出て来るほどだ。
んでこの度、めでたくポチッたったというわけ。
アマゾンでよ。
都心の一等地での夜勤の休憩。
ここのところこれを聴きながら、あたしゃひたすら歩いている。
スーパー・カーの販売店が建ち並ぶ夜の街を、外国人ナンバーの路駐する通りを、この底辺おっさんは、ナベサダを聴きながらゆくのだ。
まあ、なんだ。たまらんわな。
おそらくは、ごりごりのジャズ・マニアからは興味の対象外であろうし。
かといってフュージョン側からも、どうなのよと。
けどメンバー陣は、門外漢のあたしなんかでも知っているメジャー・リーガーばかりでね。
デイヴ・グルーシン、
チャック・レイニー、
リー・リトナー、
スティーヴ・ガッド、
エリック・ゲイル、
リチャード・ティー、
マーカス・ミラー、
ジョージ・ベンソン……etc。
こんだけ時代をおいた今あらためて聴くと、もちろん変わったのは音楽の方ではなく、ガキからおっさんに変化(へんげ)した不肖闇生の方なのだが、実に新鮮で、おもしろいったらない。
いい音楽は懐かしむものではない。
音楽にとっては再生されたときが『今』なのだ。
メロディが鼻歌でなぞれるほどシンプルなのが、ツボだね。
追記。
『オレンジ・エクスプレス』には、ライナーの注意書きとして、
※注「ケニヤ・ヤ・アフリカ」は原盤権の都合によりCD化されません。ご了承下さい。とある。
くわしくは知らんが、そうやってなんらかの事情で、後世に再生される機会からこぼれてゆく音もあるのね。
開封してライナーを読まなければ、わからない事ですな。
その埋め合わせのつもりか、ボーナストラックとして原盤になかった歌モノのシングル曲が収録されている。
シングル企画で歌モノだなんて、へえええ。そうなんですね。フュージョンで……。
☾☀闇生★☽