壁の言の葉

unlucky hero your key

おいでよ。

Sweet Nest/コトリンゴ



「その人に、勝手に心の中へ家を建てられてしまったような」と。
 そう譬えるのだ。
 コトリンゴは。
 恋をね。


 でもって、それなら相手の胸の底にも自分の家を建てたいなと。
 けれども、そうは問屋がおろさないと。
 ならば、せめて妄想しましょと。
 相手の心のすみっこに建てた自分の家で、
「おいでよ」
 その人がふと気づいて遊びに来てくれるのを待っていようと。
 新作『Sweet Nest』収録の「おいでよ」はそんな曲想なのだそうな。
 数日、この曲があたまから離れないのであーる。


「ここにおいでよ
 朝がくるまえに♪」


 いい喩えをするなぁ、と。
 んで、おもしろい曲想だなぁ、と。
 家ね。
 家か。
 家だ。
 家。
 で、これ、恋だけじゃないものね。
 ね。
 友もまた、そうだ。
 家族とか。
 仕事仲間とか。
 好きな作家の言葉や、音楽のフレーズ。
 映画のワンシーンだって。
 そんなのがごちゃっと集まって景色を形づくって、町になっていたりするんだ。
 けれど、いちど胸に住まれちゃうと、さあ大変。
 こっちの意思なんてそっちのけだから。
 みんな勝手に住みつくわけだから。
 選べないわけだから。
 ちょっとやそっとじゃ出て行ってくれない。
 ま、それもふくめて町だったりしてね。


「おいでよ」


 俺の家。
 人様の胸にくらいは、ちっぽけでもいいから、建てたいなぁ。
 せめて、言葉のかけらでもいいから、残したい。
 存在感、うすっぺらのぺらっぺらなのだ。俺ってば。
 もおね、建てられてばっかだ。




 ☾☀闇生☆☽



 「待つ」とはいえ曲は、春の土手を行く自転車のような疾走感です。
 Youtubeで観られるPVも、いとよろし。
 ぜひ。