壁の言の葉

unlucky hero your key


 午前さまである。
 のっけから、さま付けで、すまん。
 いくつか書きたかったことがあったのだが、諦めるよ。
 また長くなりそうだ。
 
 
 しっかし、まあ、あれだ。
 なんだ。
 もわさー、とくるね。この湿度は。
 湯船のなかでもがいているような。
 そんな気分。
 
 
 先輩が長年ダイエットに失敗し続けているのだが、と。
 唐突に、そんなことを思い出した。
「最近、真夜中のホットケーキにはまっちゃってさ」
 なんせ、そんなことを告られたのである。
 あたしは。
 その先輩は、彼の担当店の同僚と毎月ダイエット対戦を繰り広げていて。
 それが、たがいにあきらめモードといった、志の低さでもって同調してしまい。退屈なる悪循環におちいっているという。
 今月勝利すると、その油断で翌月負けるという。
 そんな譲り合いを、当番のようにやりあっているというのだ。
 律儀にも。


 かたや最新の器具やらジムやらと、投資ありきでそれを達成しようというタイプ。
 むろんロデオマシーンも、ブートキャンプも試したさ。
 身銭を切ると、効き目がいいと暗示できるという。
 対する我が先輩はというと、食事のコントロールでもって、どうにかしてやろうと。
 それはいい。それはいい。
 問題はこれだ。
 それなのに、真夜中にホットケーキという。
 ばかりかトッピングにアイスクリームをのせて、さらにはハチミツをたっぷりかけて、と。
 自殺行為じゃないすか、と進言すると。
 いけない、いけないと思うものほどうまいんだよ、とぴっかぴかの恵比須顔で告るのだ。
 夜な夜な起きだして、こそこそ作りはじめるところからして愉しいんだと。


 勝手にせえっ。


 である。
 んなとこで背徳を愉しんでどうすんの。
 めっ。


 ようするにそれほど真剣な問題でもないと。
 ごっこであると。
 ああそうですかと。
 あたしゃもう寝ますよと。
 ホットケーキなら夢の中で好きなだけ焼いててください。
 あまったらみんなの夢におすそ分けしといてください。
 あたくしのはアイスクリームは結構ですから。
 はちみつだけはたっぷりと。
 お皿は各自じぶんでお片付け、ね。
 ね。

 


 おやすみなさい。






 ☾☀闇生☆☽