壁の言の葉

unlucky hero your key


 目覚めがスキャットマン・ジョンである。
 いきなり。
 あたまのなかでえんえんとループしていて。
 奴のは一枚も持ってないし、
 それは断じて、そうだし。
 持ってても隠すし、
 なによりいまどきスキャットマン・ジョンというのも、痛い。
 DA-YO-NEほどではないにしろ、
 とうとう暑さでやきがまわったのかと。


 バグである。
 

 昔、ダウンタウンの深夜番組で、こんな企画があった。
 お年寄りを元気づけようと今田、山崎邦正、キムが老人ホームを訪問して、あれこれとゲームをやってもらうという。
 そこで、
「ダンスタイーム」
 と強引に踊ってもらう曲が、そのとき流行っていたイッパツ屋おじさん、このスキャットマン・ジョンであった。
 あんなアップテンポな曲で、むちゃな…。
 案の定、呆然と立ち尽くすご老人たち。
 しかし、山崎にうながされて、一人が小さくリズムを取り始める。
 観覧していたばあさんを無理やりに舞台にあげて、ペアを組ませると、
 闘争心に火がついたのか、
 それを見ていたほかのじいさんが、唐突に踊りだして。


 うん、
 苦笑い。


 そういや、
 ひとり、やんちゃなじいさんがいたな。
「みーんな頭はハゲか真っ白なのに、みてごらん、この人だけ真っ黒でふさふさ」
 そういってレポーターに仲間のヅラをちくる奴が。
 それも横から割り込んで、わざわざだ。


 ああ、
 書いてるうちにループが止まった。


 今週はポニョでも観てこようかと思うのだが、混んでんだろうな。
 あれはまだまだ元気な、巨匠じーさんの手によるアニメである。
 そうこうするうちにスカイクロラが始まってしまうぞ。
 じーさん予備軍が作った恋愛映画だというぞ。
 どうするよ、おい。
 その予備軍にして少年。いや、元少年。
 の晩年。
 野田秀樹の新作のチケットもとらなきゃ、だな。
 前回の『THE BEE』同様に英国人俳優との四人芝居。
 劇場も同じシアタートラムである。


 芝居というものは、小さな劇場がいい。
 少人数で装置が少ないほうが、凝縮してて、こちらの想像力が喜ぶのだ。
 あの濃密な空間は、やはり生でないとね。
 その分、チケットが取りにくいのだが。
 前回は三つの希望が全部当選してしまって、財政難を呼んでしまった。
 そのうちの一回は、真ん中の真ん前。
 でもって隣席がぽっかり、あいてやがんの。
 なんか、傍目には、ふられちゃった奴である。
 あいつ、すっぽかし? みたいな。


 少人数といえば、鴻上尚史の『トランス』。
 三人芝居である。
 戯曲で読んで感動したのだが、残念ながら芝居としてはまだ観たことがない。
 代表作なんですってね、彼の。
 かつての同級生が、くたびれた社会人として再会してはじまる話だが。
 女は精神科医。
 男は三流ライター。
 そして、もう一人が二丁目のアイドル。
 だったと思う。
 上演では、人物の世代を二十代としていたはず。
 けれど、
 あとがきでは、できれば年寄りの設定での上演も観てみたいと。
 再会までに積み重ねた歳月が、またちがったトランスを生むに違いないと。
 そう、ある意味、人生のバグを描いたのかもしれないね。
 このトランスは。


 観たいなぁ、みたいな。






 ☾☀闇生☆☽