壁の言の葉

unlucky hero your key

こだま。

 いいかげんLINEくらいやってよ。


 尊敬する先輩にそう言われる。
 故人を偲ぶ会でわかれたあと、ふと参加メンバー全員にメッセージを送ろうとしたらしい。
 参集したなかであたしだけがLINEしてないことに気づいたという。
 つまり、その時点まで気づかなかったのだから、先輩のなかでのあたしの位置はその程度であるとわかりますわな。
 ははは。
 ならばいいじゃんか、と開き直るのだ。


 上京したころは、スマホは当然のことながらケータイなんてものもまだ世には無く、
 しかも住居はトイレ共同、電話共同、風呂なしで宅電もなかった。
 寮の共同廊下にひとつだけ赤い公衆電話があって、ベルがなると気付いた近くの住人がそれに出て当人を呼び出したり、伝言をことづかったりしていたものである。
 あたしにかかってくることなど、ほぼほぼ無い。
 呼び出し*1しなくてはならないので気をつかうのだ、と友人たちに言われた。


 まあ、わかりやすい嘘ですな。
 当時は『呼び出し』は少ないながらもまだまだありましたから。


 バンドを組んでいた友人からも、いいかげん電話くらい引けよ、と言われつづけていた。
 まもなく寮が老朽化のため建て直しとなり、追い出されて現在のボロアパートに転居。
 晴れて自分の電話を持った。
 しかし、まあ、その友人からも、その他からもかかってくることなんかなかったね。
 こちらからかけることはあっても、鳴ることはまずない。
 わざわざ当時最新式の留守電まで買ったのだが、無用の長物で終わりました。

 
 やがて仕事で必要だということでケータイを持ち、
 それがガラケーなどと呼ばれるようになり、
 パソコンを買い、
 ネットだメールだと時代は進んだが、そんなことで対人環境が変わるはずもない。
 魅力のないやつは、技術がどんだけすすんでも、魅力などもてるわけがない。
 

 なので、めんどくさい。


 あたしに対人的需要がなくとも、使い方くらいは覚えておくべきだろうけれど。
 ……という感覚でやったところで、持ち腐れなのは見えている。

 

 さて、
 今日は日中すずしかったですな。
 夜勤はさらに過ごしやすくなる模様で。
 帰路のチャリンコは未明の涼しい風のなかである。
 月は出ているのだろうか。



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 犀の角のようにただ独り歩め。
 
 

 ☾☀闇生★☽
 
 

 
 

 
 

 

*1:おもえば『呼び出し電話』というのも、失われゆく文化ですな。かつては会社でも家庭でも電話というものは、お目当ての人にたどり着くまで、段階がありました。好きな子の家に電話するには、その難関をこえる覚悟でしなければなりませんでした。いまは『直』ですもの。