壁の言の葉

unlucky hero your key


 酔いつぶれて目覚めた真夜中。
 ふとカレーライスが食べたくなって、コンビニへ。
 こんな夜更けにご飯はよくないと自覚しつつ。
 でも黒澤明は夜中に空腹で目覚めたときのために枕元へ特大の握り飯を毎晩用意させていたんだよな、と思いつつ。
 食す。
 今宵は世界の黒澤式でいこう。
 と食す。
 実はコンビニの弁当自体が何年振りかといった具合であり。
 それでその何年振りかの小さな後悔もこの度は味わうはめになってしもーたといった塩梅だ。


 嗚呼、ご飯が薄っぺらい。


 ご飯が薄いと哀しいよね。
 量が少なくても、もちょっと盛った感じにはしてほしいよね。
 とりわけトッピングのカツがスレンダーだよね。
 駄菓子のカツみたいだよね。
 そのくせ食後のゴミばかりは、がさばるんだよね。
 こんなだったらせめてご飯を自炊して、ルーはレトルトで済ませたほうがよっぽどよかったじゃんか、と噛みしめた。

 
 んで、思い出すのだ。


 昨日の現場を。
 三人配置指定で、うち二人が遅刻ときやがった。
 ひとりは指示ミス。誤った現場の番地を本部が送信していたのである。
 だもんで当人には罪が無い。
 もうひとりは寝坊。
 繰り返す。
 大の大人が、寝坊だ。
 まあ、やっちまったもんは仕方ないとして「どうせもう辞めようとおもってんですよ」とか言うな。
 そのタイミングで。
 お給金を頂戴していながらさ。
 かっこわるいぞ。学生。
 とどのつまりそのネガティヴな姿勢が、寝坊を招いたのだよ。
 遠足や初デートに寝坊するやつはほとんどいない。
 ゴルフに行くお父さんは、きまって早起きだ。
 黒澤の深夜の食欲も、翌日のロケに武者震いをしているがゆえの眠りの浅さが招いている。
 と決め付ける。
 現場に早く行きたくてすぐ目が覚めちゃうと言っていたもの。
 ケービ員だって現場にわくわくしやうぢゃないか。
 デートの心意気でいかうぢゃないか。
 まずはだ、
 その途切れなく垂れ流す会社への悪口やつっこみは、ちゃんと仕事をこなしてからにするべし、ではないのか。
 でないと、


「連日、ろくな隊員つけてくれねえなあ」


 といった形でネガティヴが伝染することになる。
 案の定、まんまとあたしに伝染っている。
 こいつが負の連鎖を生んでいくのだ。
 よもやの事態を引き起こすのだと。
 いかんいかんいかん。
 いやんいやんいやん。
 この度の闇生の衝動的な夜食は、その腹いせがてらには違いない。
 わかってんだもお。
 こういうのも、ともすれば習慣化して悪循環になるのを察してもいる。
 ならばどーする、である。
 明日は新人さんとだ。
 先週その初勤務のお相手をしたばかりのしゅっとした若者。
 希望する職種に就けるまでの間繋ぎとしてケービを選んだのだという。
 ほおお。
 んが、それをあたしに言ってどーすんのか。
 何を言いたいのか。
 間繋ぎだろうが、
 バイトだろうが、
 本業だろうが、
 ベテランだろうが、
 新人だろうが、我々を注文するお客さんには関係のないことではないのか。
 といった事ごとを固く胸に仕舞いこんで、せめて気持ちのいい先輩でいよう、と思ふ。
 ごちそうさま。
 カツカレー。
  



 おやすみなさい。



 ☾☀闇生☆☽