松垣透著『破門』リム出版新社 感想追記。
読み返すと悪口に終始してしまっている。
なので追記する。
おもしろかった点。
落語家新人賞のテレビ収録会場。
そこには『笑い屋』といわれるおばちゃんたちがいて。
これは、出場者の芸にリアクションをするお客さん役なのであるが。
わかりやすくいえばドリフコントの例のアレである。
彼女たちは収録開始時間のはるか前に近くの公園に集合していて。
事前に「今日は長丁場だから、ダレないように」と気合入れをしたり。
噺家さんたちの将来が自分たちのリアクションにかかってるのよ、などと確認しあってテンションをあげているのである。
いわばウォーミングアップというやつで。
アップが済むと二列縦隊で公園を出発し、歩道を行進し、粛々と会場に入る。
そのまま二列のまま廊下を抜けてスタジオへ。
用意された二列の観客席にそのまま位置につくのである。
式典のようではないか。
とまあ、そこまで熱い「笑おう」「リアクションしよう」という前のめりの意気込みであるからして自然であるわけがなく。
噺家との呼吸も噛み合わず。
ねらいとはズレたところでそれに見合わない量の笑いがおきたり、あるいは間(マ)をつぶされてしまって、演者はリズムを狂わされてしまうのだとか。
ようするに、このおばちゃんたちこそが出場者たちの最大の難関であると。
さながらラスボスだ。
けれどそのおばちゃんたちにしてみれば、それこそが混じりけなしの「善意」であって。
精神的にはサポーターであり、12人目の選手なのだな。
運動化した善意ほどやっかいなものはない。
本文中、おばちゃんたちが触れられるのはほんの数行。
だが、これはこれでネタになるかと。
かえってこのおばちゃんたちのドキュメントこそ、読みたい。
コントにもなれば小説にもなるだろう濃厚なネタの匂いが、がそこにあった。
☾☀闇生★☽