壁の言の葉

unlucky hero your key


 というわけで、
 午後からの半日出勤。
 一時間二十分かけてひーこらひーこらばひんばひん。
 自転車で現場に駆けつけてみると、
 なんとなんと誰もいない。
 作業開始時刻を過ぎても、しんと静まり返っている。
 十五分経って、支社に確認を要請。
 返事を待つこと一時間、中止とのことであーる。
 監督が連絡を怠っていたと。
 この有名建築会社、
 ガードマンなんぞは思慮の外なのだろう。
 待ってるあいだに蚊にさされた。
 だもんで踵をかえしてばひんばひん。
 こんどは雨雲に急きたてられるようにして家路へと。


 闇生。
 片道一時間半かけて、
 都心の蚊に血液を提供してきました。




 一撃必殺、
 潰したったけどね。




 にしても、
 雨の降りはじめというのは、みんな急ぎ足だ。
 危ないっすな。自転車。
 後方を確認しないで左折やら右折やら。
 ケータイ見ながらふらふらするのや。
 後続車があるかもしれないと、せめて想定しようぜ。
 

 ついでに言えば、
 自転車は車道を走れというものの、
 肝心の車があぶねえのなんのって。
 今日も左折車の内輪に巻き込まれそうになったよ。
 みると、ケータイ観ながらハンドル操作してやんの。
 本来、内輪側の安全を確認する助手席のやつまでケータイ手にしてたよ。
 『助手席』の助手の意味わかってんのかね?
 女子席って意味じゃないんだぞっ。


 あ、
 それと、
 もひとつ冷やりとしたのは。
 たとえば右折する車っていうのはセンターラインに寄って停車するでしょ。
 そうしたうえで対向車の切れ目を待つと。
 すると後続車はその左側をすり抜けて直進しようとするでしょ。
 そのとき、進路は左側。つまり歩道側にふくらむわけで。
 そこを後方からバイクなり、自転車が走ってくることを忘れるドライバーが多いんだ。
 あたしも一度やられた。
 その瞬間、並走していたのだが、右ひじをサイドミラーにこつんとされた。
 ハンドルをとられて急ブレーキ。
 あてた車も少し前方で停車したが、
 バックミラーでこちらが無事と確認したのか、しれっとして走り去ってしまった。


 おばはん。


 いらっときたので、
 四つ先の信号まで真うしろを追跡。
 んが、
 ついに逃げ切られてしまうと。
 なんどもミラーの中で目があったので、
 恐怖させることはできたでしょう。
 ありったけの笑顔で追いかけてやりました。
 そうさ。気分はシャイニングのジャック・ニコルソンだ。
 空いてる道なので、右折車が待った対向車なんて一台か二台だ。
 なのにそんなに急いでどうすると。
 仮にあたしになんかあったら、それで人生おしまいでしょ。
 ひっかけた奴もさ。


 というのも同僚がひとり、
 それで命を失っているのね。
 車列を縫うように抜いていくバイクに、ひっかけられた。
 それでひき逃げ。
 なんでそこまで急ぐのか。


 きっとそいつはいま、
 のうのうと生きてんだろうな。
 自分がひっかけたのが死んだのも知らずに。
 ならば教えてやろう。


 お前がひっかけた自転車のひと、
 死にましたよ。
 









 エウレカ
 よかった。
 彼の人がどこに感動したのか、わかった気がする。
 お話を理解しようとすれば、
 少なくともあたくしレベルのオツムにはむずかしい。
 ほったらかしの部分も、
 無駄なクダリも多かったし。
 けどやはりそこはアニメの強みで、
 直感で感動できるようになっている。
 

 ただラスト。
 最初のころから気になっていたのだが、
 この世界で使われている文字。
 これは架空のものにした方が良かったのではないだろうか。
 文字や言葉ってのは文化そのものですから。
 歴史ですから。
 SFのなかに登場させるなら、デリケートに扱わんと。
 ましてや、
 世界中が共有する月面に、日本語でアレは。
 

 そんなわけで、
 とはどんなわけか。
 早くに帰宅した。
 んが、
 なんだか疲れていて、
 そのまま眠りこけてしまった。
 エウレカのせいだろう。
 夢をみた。
 たとえば中学生の初恋のような、
 胸に苦痛の残るやつで。
 くそったれ。
 我ながら年甲斐もない。
 
 





 いまだにあなたの夢を見る。
 



 ☾☀闇生☆☽