実はタイトルの頭には「ヴィム・ヴェンダース・プレゼンツ」と付く。
いやらしいが、そこはやはり大人だもの、仕方がないだろう。
かく云うあたしもそれに釣られてやったという次第なのであーる。
えへん。
豪雨の街を舞台にした群像劇で、雨の中を過ごすそれぞれの人生のほんの一幕を切り取っていくという趣向。
けれど、たとえば傑作『マグノリア』のように、それぞれがどこかで交錯したり、ニアミスを起こしたりすることはほとんどなかった。
あってもその交差点自体に、交差以上の意味は少しも醸し出されてはいない。
よってこの映画の統一性は止まない雨と、
地元ラジオ局から流れ続けるジャズだけなのである。
ありがち、と言えばありがちだ。
で、それ自体は決して悪くはないはず。
ならば本当に短編集として、一幕、二幕といった黒澤明の『夢』のような作りにすればよかったのではないのだろうか。
(とはいえその黒澤のも、本人が意図しない統一感。起承転結的な関連性が生まれているのだが。)
それをせずにあえてスクランブルにしたというならば、各話の関連性を強く押し出さなくては効果が無いのだ。
うん。
無いな。
都会の夜と、
雨と、
ジャズと。
そこに生きるブルースな群像劇。
そんなイメージを拠り所として発車した企画なのだろう。
けれど、その思いつきが練られてアイディアへと昇華し、やがて映画に結実したような感触は無かった。
言いきっちゃうよ。
それぞれの話の完成度すらも、あまり高いとは言えないのだもの。
ピーター・フォークの演じるダメおやじが、痛かったっす。
つらかったっす。
タイル職人の話。
落語の『持参金』のようになるのかと期待したが……。
オチのカットは、笑っちゃいました。
☾☀闇生☆☽