ガス・ヴァン・サント監督作『パラノイドパーク』DVDにて
物語的には、予告編で得られる情報で、ほぼ事足りてしまう。
公式ページなどで閲覧できるトレイラー。あれがすべてである。
http://paranoidpark.jp/flash/index.html
(ちなみにこの公式のって、随分と省略されてませんかね。DVDの発売予告のやつが、最もこの映画の雰囲気を伝えていると思うのだが。その一方でYoutubeなどにアップされている劇場予告はサスペンス要素だけをとりあげていて、煽りすぎ。)
なのでストーリーを語ったとしてもネタバレも何もない、といっていいのではなかろうか。
とどのつまりこの作品はエンタメ的なオチや、どんでん返し、はたまた起伏にとんだ語り口で魅せようというのではないのね。
この監督のことはまるで詳しくないのだが、ひょっとすると大衆受けモードでつくる場合と、そうでない、たとえば単館的な狙いで撮る場合とがあるのではないのかな。
と勝手に決めつけておこう。
んで、
いわずもがな、本作は後者であると。
それは撮影監督に90年代に一世を風靡したクリストファー・ドイルを起用している点でもあきらかなのだ。
んがしかし、である。
念のため以下は感想なので御注意を。
スケボーに明けくれる思春期の青年が主人公で。
いや、少年と言おうか。
セックスやら、
ドラッグやら、
ちょっと不良っぽいことに目覚めはじめたころで、
両親の知らない秘密なども、ぽちぽちと増えて。
だもんで家族からすこし距離を置きはじめるが、
かといって両親は不仲より仲よしでいてほしいと切に願ってもいる。
たちこめるのは得体の知れない憂鬱と。
怒りすら心の隙間から揮発してしまって充満しない、ある種のあきらめと。
脱力と。
それはまるで永遠に続く曇天のようなやるせなさで。
という、だれもが通過したか、肩越しにかすめたに違いないアノ時期の感情が画面からほとばしってはいた。
てか、
実はそれのみが、映画のもくろみなのではないのか。
かててくわえて、そこへ事件が起こると。
スケボー好きの不良たちのたまり場、通称パラノイドパーク。
こっそりと出かけたそこで主人公は、事件を起こすのだな。
先輩不良から教えられるままについていった貨物列車への無賃乗車。
どこの国にもある思春期の度胸だめしのノリである。
しかしあえなく発覚して、警備員に見とがめられてしまうと。
車上の少年は、線路上を駆けて追いすがる警備員をスケボーで打ちはらおうとするのだが、ぶたれて転倒した警備員は運悪く対向の列車に轢かれてしまうのだ。
哀れ警備員。胴体まっぷたつである。
とまあ、
ここまでは予告編のとおりで。
少年は現場から逃げ去ってしまうのだった。
翌日、それは殺人事件として報道され、警察はパラノイドパークに出入りする若者たちの聞き取り調査をはじめるのだが・・・・・・。
要はその事件のあとだ。
誰にもいえない罪を胸に、苦悩のなかを生きる少年のモヤモヤ。そのモヤモヤそのものが、この映画なのであーる。
なにひとつ解決はしない。
起承転結的なカタルシスも無論、無い。
繰り返すが、この映画のもくろみはそこには無いのだから。
そうわきまえた上で、ここからちょいと語らせていただけばだ、好き嫌いの分かれそうな相変わらずのドイル節に触れねばなるまい。
8ミリっぽさを狙った画素の粗い手振れ画面。
例のアレね。
でスローモーション。
とりわけこのスローがくどいのだな。
回数としてもしつこいし。
はかない思春期を匂わせようとするあまり、そうなっているのだろうか。
あるいは、作り手自身がそこに酩酊しているのか。
どちらにせよ頻度からしてなにやら意味ありげで実は意味が無かったり、する。
主人公に好意を抱くニキビの不美人な少女がいるのだが。
(こういう役者を堂々とつかうあたり、邦画は見習え)
彼女とつるんでいる友だちが妖しさ満点な美形さんで、なおかつカメラが意味ありげにスローとなり、このコに寄るシーンがある。
ははん、さては後に主人公に絡んでくるという暗示なのだな。と思いきや、以降登場しないという空振り具合でござった。
なんだったんだ、アレは。
うん。
まあ、
そんなこんなで、主人公少年の可愛さと。
少女たちそれぞれのみずみずしさ。
蒼さ。
そういう映画でございました。
ちなみに事件。
警察は殺人事件として調べを進めていた。
けれど、轢いた側の電車の運転手は、その瞬間を目撃しているはずではないのか。
ならばその運転手の証言があっても良さそうなものだが。
少なくとも殺意あっての事件ではなく、事故らしい、とね。
☾☀闇生☆☽