壁の言の葉

unlucky hero your key

すけべな太鼓。

EL&P/タルカス


 目覚めたら、そんな言葉があたまに残っていた。
 なんだ、すけべな太鼓って。
 なんせすけべだ。
 ナニが一本だけじゃ物足りないに違いない。
 ぶっといばちを二本も使って、
 代わりばんこにずんどこずんどこ、ぶったたけば、
「もっと、もっとぉん」
 なんて悶えるのだろうか?
 撫で撫でしてじらしたら、
「いやあん、いじわるっ」
 ドラムロールなんぞかましたひにゃあ、どんな声をあげるのか。
 

 自分の無意識の置き土産に、うんざりするわい。
 おまえいくつだ、っていう話だ。
 

 池袋のサンシャイン国際水族館に、ぶらりと行ってきた。
 脈略もないが、そうしたのである。
 いゃあ、いっぱいいたよ。うまそーなのが。
 魚もおもしろかったが、それにはしゃいでいる子供たちの方が、眺めていて愉しかった。
 いまの子はケータイをもってるから、やたらめったら撮りまくってんのね。
 んで撮っちゃー、写り具合を確かめてんだ。
「あ〜あ、後ろ向いちゃってる」
 なんてさ。
 

 まずは、実物にはしゃごうぜ。


 エイが、鼻をガラスにおしあてて、どーにかして突破してやろうと羽ばたき続けていて。
 うけた。
 あと、アルマジロのフォルムがやけにかっこよかったけど、デザイナーをチェックしてくんの忘れたな。
 タルカスだね。EL&Pの。


 それから、秋葉のなんてことないラーメン屋で、ラーメンを食べたよ。
 食券式の、
 内装もプレハブっぽい店で。
 ほら、最近はおしゃれでしょ、一風堂とか、雑誌に紹介されてそうな雰囲気が多い。
 で、やれとんこつだ、塩だと、選択肢が増えて。
 具もオリジナリティを競ってカラフルで豪勢だし。
 その反面、ふつうの『ラーメン』をたべる機会がめっきり減っちゃってね。
 ふと、プレーンというか、ただのラーメンが食べたくなったのだ。
 リセットとでも言おうか。
 で、ひょいと飛び込んだ店で食ってみたという次第。
 うまかったよ。
 ああ、ああ、こういうのだった。なんて、変な話だけど、思い出させてくれた。


 で、ついでにこんな映画を思い出したのであーる。


 伊丹十三の傑作『タンポポ』。
 つぶれかけの小さなラーメン屋が、さまざまなラーメン通の助言を得て、見事復活するまでの物語。
 あいまに、当時のグルメブームへの皮肉がまぜこんであり、今観ても相当に面白い。
 伊丹はこれをラーメン・ウエスタンと、呼んだ。
 かつてビデオ屋に勤めていた頃、フランス人の女性会員さんに、日本映画のおすすめは何かと訊かれたことがある。
 日本語を勉強中の方である。
 いろいろ迷ったが、何をおいても黒澤はカタイだろうと。
 外国人ならばうけるはず。そう思って『赤ひげ』を。
 それとこの『タンポポ』を薦めてみた。
 

 結果、赤ひげは、江戸時代の日本語が難しかったらしく、反応はいまひとつ。
 で、一方『タンポポ』は、非常に良かったと。
 けれど、不思議な映画だとも。
 思えば、かつて日本に住んでいたエドワード・ノートン(『ファイト・クラブ』など)が、この『タンポポ』を、もっとも個性的で印象に残った映画と評していたのだ。
 なるほど、メインのラーメン店の話とは別にショートストーリーが、いくつも挿入される。
 そのスタイルがまず、斬新。
 で、
 そのフランス女性の感想だ。
 彼女は言いにくそうに、
「最後のおっぱいは、どういう意味ですか」
 と、質問された。
 エンディングで、赤ちゃんが無心に母乳をむさぼるシーンがある。
 それだけが、ながながと映っている。
 当時は、伊丹特有のエロとブラック。そう片づけていたのだが。
 そのフランス女性は、明らかに苛立っているではないか。
 おそらくは女性蔑視の匂いを、そこに感じたのに違いない。


 あたしゃ、ごにょごにょとごまかして応対したのだが。


 あとになって、気がついた。
 あの映画にさしはさまれるショート・ストーリーはすべて『食』にまつわるものなのだ。
 これほどまでに食は、人を泣かせ、笑わせ、愉しませ、怒らせ、人生にかかわってくると。
 そして最後に伊丹が提示したのは、生を受けた人間が最初にかならず口にする食。
 それは母乳だ。
 まあ、ミルクでもいいが。
 人間の歴史からいったら、圧倒的に母乳と言っていい。
 これほどまでに人生を振りまわす食のすべては、そもそもはこの母乳から始まったのだと。
 そういうことなのだ。
 

 え?
 話があっちゃこっちゃにそれてるって?
 それてこそ、本道かと。


 ともかくだ、
 プレーンのラーメンのありがたみに、この『タンポポ』を思い出して、二重にうまかったと。
 食の原体験は、とどのつまりがプレーンだ。
 最小限、最低限のオプションであるからして、エロティックだぞと。
 夢が置き残した太鼓のすけべっぷりも、おそらくは、そういうシンプル所以のもの。
 そういうこった。



 

 ☾☀闇生☆☽


 などと書いてたら、連想してしまった。
 『プレーン』+『最低限のオプション』=エロ。
 それはさながら『まっぱ』に『ベレー帽』だけの女。
 プリンスの代表曲、ラズベリーベレーだ。
 



 とまあ、
 今日でブログ一歳。
 進歩ねーなぁ。