壁の言の葉

unlucky hero your key


 蝉はみな、
 仰臥、合掌で逝きやがる。


 午後、まがまがしいまでの雨雲。北から。
 けれど結局、降らなかった。
 都心では突発的な豪雨だったらしい。
 降る、降るっていうから、ウォーキングをサボったのに。


 三本百円のキュウリを買う。
 が、考えてみると、これといった使い方を知らないわけで。
 味噌?
 浅漬け?
 ええい、
 ぶった切ってポン酢をかけてむさぼってみた。


 みんな元気でやっているのだろうか。
 楽しくやってんだろうか。
 旅先で五輪でも観てんだろうか。
 夏にやられて、しっかりとダレテんだろうか。
 んが、
 それを知ろうとするのもまた、先方にとってはうるさいわけで。


 ぢぃっとこらえる。


 みんなどこへ行っちゃうんだろ。
 皮膚をただれさせた三毛猫が、近所の門柱で寝ている。
 朝も、夜もそこに寝そべって。
 でもって舐めてばかりいるから、いっこうに良くならない。
 その猫が、部屋で寝ている俺をたずねてきて、網戸ごしにのぞいている。
 そんな夢をみた。
 気づくと、なぜか部屋の中にあったはずの洗濯かごを咥えて逃げて行く。
 屋根から屋根へと。
 逃げんなよ。
 いったいどこへ行くんだか。




 朝刊を配達するスーパーカブの音。
 今日がまたはじまるよ。



 

 ☾☀闇生☆☽