壁の言の葉

unlucky hero your key


 いい歳ぶっこいて哀しき習慣を告白してしまうが、帰宅するとすぐテレビを点ける。
 んが、
 もう長いこと音声は切りっぱなしにしている。
 朝目が覚めてもすぐにテレビを点ける。
 こちらはまあ時計代わりというやつで。
 パソコンやら朝食の支度にとりかかりながらチラ見で相手してやるのだ。
 そんな自分をあたしゃ『おひとりさま』だなんて甘やかしたりはしない。
 それはいい。
 それはいいのだ。
 今朝の事である。
 何を思ったかボリュームを上げてしまったのだな。
 朝刊各紙の主な記事を紹介するコーナーらしく、地球外生命の化石が見つかったとかなんとか言っていたので、つい上げた。
 その記事を紹介しようとする女性アシスタントのネイルに、進行のリズムをぶった切ってまでメイン司会者が食いついていたので、思えばイヤな予感はしていたのだった。
 

「政治にカネなんか一銭もいらないっ」


 続く外務大臣の辞任問題を取り上げて、色黒い名物司会者が我が物顔で熱弁をはじめたのだった。
 発言の根拠として彼はこう続けたのだ。


 その昔、
 日蓮上人は托鉢しながら辻説法で全国を……。






 ボリュームを切った。
 リモコンを探す時間すらもどかしく、本体のスイッチを潰さんばかりにプッシュした。
 指先に埃がついて、それみたことかと後悔までした。
 なんだろう。
 ツッコミどころしか無い。









 甘いもの摂取して、落ち着こう。
 今日も落ち着いていこう。



 ☾☀闇生☆☽