土曜の夜勤でご一緒したSさんが執拗にコンタクトをとってくる。
 彼は連投で直後の日勤にも出る予定だったのだが、予想外にもこの夜勤が早く終了してしまい、漫喫で時間調整をするとのことだった。
 おそらくは小雨があったせいだろう。
 しかし、あいにくとそのおカネが無いという事態でござった。
 だもんで希望された金額2000円をこの闇生、お貸しした次第で。
 本日お互いに会社に出る用事があるので、そこで待ちあわせて返済したいというのである。
 んが、こちらはその時間が惜しいのであーる。
 互いに違う現場に出動しており、終了時間もことなるのであーる。
 2000円のために30分も40分も待つのもどうかと思うし、顔をあわせばなんやかんやと、礼だの世間話だのになるに違いない。
 めんどーだ。
「またの機会に」とする。
 ショートメールで盛んにひきとめられたが、振り切った。
 いつかどこかの現場で偶然会ったなら、受け取ろうじゃないかと。
 それに、なかなか会えないとなれば、その借金ぶんは財布の中に別腹として分けられるのではないか。
 彼に常識があるならば、そのカネには手をつけないように心がけることだろう。
 いつ、どこで会ってもいいように。
 そういうところから欲望をコントロールする訓練をはじめなくてはダメな人なのに違いない。
 考えてみれば深夜であってもコンビニで現金などおろせるご時世だ。
 しかも貸したのは、給料日の翌日であった。
 にもかかわらず土曜の深夜に、50オーバーのおっさんが、たかだか2000円をメルアドすら交わしたことが無い他人に借りるというのはどういう料簡だろうか。
 浪費癖があるのか、金銭感覚がだらしないのか、あるいは多額の借金があるのか。


 つい一週間前にも、帰りの交通費が無いからと彼に500円を貸した。
 利子と称した500円をのせて返そうとしてきたが、その利子額の根拠があまりにどんぶり勘定で。
 そーゆーとこだぞ、と思ふ。
 むろんそんな利子など拒んだが、その流れでのこのたびの2000円である。
 あたしを「都合がいい」奴と見なしたのではないかと。
 エスカレートするんでしょーか。この関係は。 





 
 この日の監督補助業務は、昼過ぎまで書類づくり。
 先日半日がかりで作った提出書類の作り直しをさせられる。
 フォーマットがまずいらしく、すべて書き直しである。
 やらされるのは二度手間、三度手間ばかり。
 時間があまれば「もったいない」と、やる意味の無い作業をさせられる。
 そのあと担当監督さんに連れられて現場へ。
 仮舗装で途切れてしまった白線をふたりで書いてまわる。
 これも、はたして自分がつく必要があるのか疑問。
 作業としてはひとりでできる種類のものだ。


 この監督は自分の話しかしない。
 経験自慢。
 知識自慢。
 似合いもしない親分風を吹かせて作業員たちを「あいつら」と見下している。
 距離をおくのでかえって距離を置かれる事態になっている。
 孤立。
 唯一好意的に相手をしてくれる警備員たちとばかりコミュニケーションをとっている。
 警備員はサービス業の一面もある。
 もみ手で接するのも、仕事のうちということに気づかずに朝から親分風を吹かせて回るのだ。
 スナックで女のコたちにちやほやされていい気になっている「シャチョーさん」のよーなもんではないのか。
 現場の進行具合や翌日の予定ですら親方と直接やりとりせず、わざわざ警備の職長を使って探らせているくらいなのだ。
「あいつら俺と話したくないみたいだからよお」
 とまで愚痴りながら。
 この警備職長がまたいいようにこき使われていて、いわゆる「本番までやっちゃうヘルス嬢」状態。
 もしくは枕営業ともいうのだろう。
 なにかというと呼びつけられて、警備以外の雑用をさせられているドМさんなのであーる。
 電動ドリルセットやら工具類を持参して、こまごまと日々奉仕活動に勤しんでいる。
 工事の告知ビラの配布やら、点字ブロックの目地に常温合剤をつめるのまで、下っ端よろしく唯々諾々としてやっている。
 一服タイムには自腹で買った駄菓子まで配っているのだから、呆れかえるではないか。
 周囲の評判もいい。
 そりゃあいいだろう。
 とどのつまりが同じ料金で本番までやらせくれる「都合がいい奴」なのだから。
 ほっときゃ炊事洗濯掃除までこなして、ベランダにちっちゃなハーブ園までつくることだろう。
 ただし、忠実に本番を拒み、警備屋のプロであろうとするチームメイトたちにとってはハタ迷惑にほかならない。
 ご奉仕に快感を覚えるのは勝手だが、その「作業」を誰が警備するのか。
 事故やトラブルになった場合の責任は、どこに行くのか。
 自己責任でまかなえるか?
 付帯業務を黙認、あるいは命じていた元請けに責任は生じるだろう。
 それを覚悟でやらせているのか。
 あまりにその個人に依存しすぎているので、この職長がコケれば、現場を回せなくなる恐れがあると監督に忠告はしておいた。
 







「都合がいい」
 に甘えるな。
 甘えるなら、責任を持て。
 そしてせめて感謝せい。
 




 ☾☀闇生☆☽