四十前後のおっさんたちが、路上で声をからして喧嘩をするなんざ、そうそうない。
深夜の、通行の絶えない路上で、売り言葉に買い言葉の大喧嘩だ。
やんのかっ。かかってこいよっ。
べつに酔っ払いではございません。
国道や都道に規制をかけての工事現場でのこと。
その現場まわりの安全と通行を誘導する警備員にとって、それはそれは危険で慌ただしい部類のお仕事なのであーる。
ときに事故られて後遺症を抱えるはめにもなるし。
危険であるだけに、真剣だし。
一定の緊張も強いられるし。
だもんで、たま〜に弾けることがあります。
ありますとも。
意志の疎通の行き違いはもちろん、チームに足を引っ張るのや、それも気を抜いてそうするのがいたりすると、容赦の無い怒号が飛びます。
なんなら手も出る。
足も出る。
ツノも出る。
プロとして公然でやっちゃいけないのは、わかっちょります。
いや社会人として、でしょう。
ええ、いけませんとも。
ましてやモノにあたるなんざね。
けれど現場はナマモノであるがゆえに、状況は刻々と移り変わってゆくのです。
いったんスタートしたら、やさしくひとつひとつレクチャーしたり、話し合ったりする時間はございません。
出来るベテランたちの面白いところは、たとえ一時的に「んだこらてめえ」の関係になっても怒りを粘着質なものにしなとこかな。
出来るがゆえに、どうせまた難しい現場で組むハメになるのだから。
喧嘩の最中も、その怒りが他へ伝染しないように、周囲のベテランが実にうまく空気を変えている。
引きずらない。引きずられない。
現場が終了すれば誰かが気を使って全員にコーヒーなんぞをふるまい、当事者たちも自然とその輪の中にいて、笑ってお開きにする。
当事者の一方が一方に言いました。
「でも久しぶりに怒鳴ってすっきりしたでしょ?」
「うん」
「ならいいよ。溜まってたのがすっきりしたんなら」
「久しぶりにぐっすり眠れそうだわ」
深夜ですからね。
毎晩ビッグスクーター野郎たちの煽りにもあえば、
酔っ払った元女子の集団に絡まれもします。
タクシーのおっさんたちの心ない態度も、
片交全体の流れを理解できないドライバーたちの「俺が俺が」の苛立ちも、我々は矢面で受けております。
溜まります。
溜まるのです。
でも折れちゃいかんのです。
折れちゃってるから溜まらない、では、人生の張りも失っているのだす。
さて明日も夜勤です。
追記。
健康診断の結果が「再検査の必要アリ」と出る。
現場を休んで病院へ。
引っかかったのは肝臓と脂質。
消化器内科と内科。
採血とエコーの結果、お酒を控えめにして様子を見ましょうとのことだった。
コレステロールとγ-GDPが問題らしい。
コレステロールは、再検査の結果、善玉のみが規定値を超えている状態に落ち付いた。
イエローカードをくらってから肉・魚・卵の黄身を絶った成果でしょうか。
γ-GDPは基準値の上限の三倍。
エコーでは胆のうに小さなポリープ発見。
それらを踏まえたうえで、徐々に飲酒量を少しずつ控えめにと。
脂肪肝も無く、肝炎もないので、いますぐ断酒という事態ではないという。
更に追記。
仲直りっつーものは、そのあとも付き合わざるをえない環境ならではでしょ。
身の置き所の選択肢が膨大で自由なほど、仲直りをしなくて済むわけ。
仲直りを避けてしまえる人生ってのも、あれだよ。それはそれはで自由の所産なのだな。
外(社会)に出れば大なり小なり、多かれ少なかれ人は人と衝突するものだ。
それをどういなしてきたか、解決してきたかで、人は練られるもの。
逃げるばかりで逃げ切れるものでもないが、むろんそれに押しつぶされてもいけない。
服従や謝るばかりが仲直りでもないのだし。
また対等であるからこその仲直りでもあるのだし。
その対等にもちこむ関係づくりも作用するのだし。
あたしゃひとりもんだから知らないが、大きなお世話と自覚しつつも、思ふ。
今の世の夫婦は、ちゃんと喧嘩できてるんだろうかと。
兄弟は、クラスメートは、正面切って喧嘩できてるんだろうかと。
全力で喧嘩しなくてはならないほど、選択肢は少なくないのではないかと。
あまりに気晴らしや逃げ場所に溢れているような。
そのくせそこにもまた居心地の悪さを感じてやいまいかと。
腹の底から怒鳴りあえる環境って、そうはないよね。
腹の中のトゲトゲしたものを大声で出し切っちゃえば、出た分だけそこにゆとりができるはず。
そのお腹の片付いたスペースに、あなたは何を納めますか?
追記。20141028
でもね、世間的には底辺同士の喧嘩なんだよなあ。
現場にいる工事責任者や職人には噛みついたりしないのに、ガードマンにはみんな言いがかりだかなんだかするでしょ?
それは自分より下と見なしているからなのです。
それも僅差ではなく、圧倒的な底辺として。
いま監督呼んできます、と云うとぷいといなくなっちゃうものね。
目の前にいるのに。
どうさばいても一回の信号では流れきれない距離の片交をさせられて、噛みつかれるのはあたしらだからね。
うちら施工計画にかかわって無いからね。
そばには監督も、職人も、はたまた工事看板をみれば発注者も受注者もわかるのに。
「あやまってすむのかよ」
今日の軽ワンボックスのにいちゃん。いきがってたなあ。
あやまってすまないなら、なんですか?
はやりの土下座ですか? 底辺相手にそれさせて満足ですか?
結局のところカネですか?
信号二回分。何分ですか?
激怒して怒鳴って、底辺ガードマン相手にせっかくのカロリー使ってわざわざ品位下げてまでして噛みついて。
しかしまあ、バカ大衆を嫌い抜いて見下しているやつほど、片交うまいです。
これはもう、面白いくらいに。
もう一台くらい流してあげたいなあ、とか。
あからさまな恫喝走行をしているのを止められなかったり。優しすぎる奴は駄目。
誘導を無視した奴が立ち往生しても、すげえのは無視してるからね。
止まれの合図を前方不注意で見落として、交差点中央で立ち往生。
「下がって」の一喝だけして、無視だ。
おれなんか右往左往して対処しちゃうよ。
なのに怒鳴られたりしますからね。ウインドー越しに。
あれ視点カメラで撮影出来ないかなとおもっている。
映画なんかではなかなかみられない、マジな表情よん。
おれがおれがとはこういう貌であると。
見るからに片側の車線が工事でつぶれているのに、ガードマンの制止をきかずに侵入しようとしてくるのってなんなんだろ。
何? 何? ってな感じで。停止線を超えてくるの、おおいわあ。
空ぶかしして煽ったところで、対向車側はスタート切ってるからね。
いまそこでお前が片交エリアを押し通ろうにも、お見合いで立ち往生でしょうに。
対向車がみえないほどの距離の片交なのだな、とか想像しないのかな。
できないのかな。
片側車線がつぶれているだけでは、わからないのかな。
そこが一通じゃないのは明らかなのに。
前の車が通ったのだから、わたしも。って?
その連続でしょ。わたしも。俺も。ぽくも。あちきもって。
対向車の人たちもそう思っているよ。
それと、いくら交互通行とはいえ、どちらの渋滞がひどいかによって、順番はかえるよ。そりゃあ。
原則はかわりばんこだけれど。
そういう情報は無線でわれわれはやりとりしてるんだから。
十五六台の渋滞と、先が見えないほど渋滞しているほうでは、後者を優先するさ。当然ね。
場合によっては二回連続流すとか。
それだって何分のずれなんだか。
にしても、
今日はもう右手首はアウトです。
連日の交差点片交の仕切りで、箸も握れないほどでございます。
☾☀闇生☆☽