壁の言の葉

unlucky hero your key

自虐の詩。

自虐の詩。下




 業田良家著『自虐の詩 上下』竹書房文庫 読了


 伝統的な四コマ漫画であるかにみせて、実はその語り口を借りた長編である。
 上巻では無職のDV男をささえる不幸な女のエピソードがたのしく描かれていた。
 んが、
 下巻はがらりとドラマティックな展開を見せる。
 そんなイサオと幸江の過去が差し挟まれてゆくのである。
 彼女はなにゆえ稼ぎも無く、呑んだくれているだけの男を支え続けるのか。
 簡単に言ってしまえばその経緯が明かされるわけだが。
 とりわけ回想シーンでは幸江とその親友だった熊本さんの青春時代に重心を置いており。
 踏んだうんこを平然と電柱にこすりつけていく、そんな強烈なキャラクター熊本さんの登場が、本作を四コマ漫画史上に残すことになった。


 なんと壮絶な半生か。


 四コマで、なおかつこの絵づらであるゆえに、淡々と読まされてしまう。
 んが、そうでなければきっと重すぎて読み進めなかったはず。
 人生という事件は、どうしたってシリアスなのだ。
 面白おかしく見える人にも、きっとあるんだ物語が。
 なんせ一生懸命に生きてんだもの。幸江。
 手加減無しの生き様だからパンツだって丸出しにすっ転ぶ。
 いまどき無いでしょ、パンツ丸出しにすっ転ぶ女。
 昔も無いかもしれんが。
 でもね、この転びっぷりがこの女の生きざまなのだと闇生は見たよ。


 あっ晴れ。


 パンツあっ晴れ。 
 おそらくは未来や夢や希望や仕合わせが、すべて自分の外側にあると。此処ではなくあそこにあると考えていたン十年前に読んだとしたら、ぱっとしなかっただろうと確信する。



 読んだ直後より、パラパラと読み返して、思い出すたびに来るでしょう。


 

 ☾☀闇生☆☽