壁の言の葉

unlucky hero your key


 胃がうけつけないが、食べないともちそうにない。
 自炊した飯と味噌汁を三十分かけて頑張って呑み込む。
 綿を噛んでいるような気分だが、そこはひとつ、噛むのだ。
 食べてないからウンコが出ない。
 この早飯・早糞しか能のない男にしては、奇跡である。


 昨日、
 サプリの定期購買の停止を電話で済ませたとき。
 受付の女の人に「何か御不都合でも…」と恐縮された。
「失業しますので」
 とはさすがに言えないね。
 咄嗟に口を突いたのが「長期の転勤で」という。
 なんとアドリブに弱いことか。
 とんとジャズを聴かなくなっているからか。
 サプリ。転勤先にだって届けてくれるのであーる。
 言いながら気づいたが、うやむやにして切ったった。


 すまん。
 あなたがたに落ち度は微塵もないのだよ。


 朝からダイヤが乱れている。
 人身事故。
 部屋にぽつんとしていてもなんなんで、と早めに出てきて正解である。
 遅々として進まない車内で、中島らものエッセイを読む。
 読む端から雑念が邪魔をしてくる。
 らもが、現実の弱気に押しのけられていく。
 音楽もなんだか、よそよそしい。
 ええい、
 ビビリめ。


「セクスィ・インコ」


 ラジオから唐突にこんな言葉が飛び出した。
 そりゃ見てみたい、とよく耳を澄ますとどうやら、
セキスイ・インコ」
 と言っているらしい。
 空耳からして、くだらんわ。

 
 開店そうそうに、姉妹店の元上司がひょっこり現れて。
 これ幸い。
 無理に雑談を浴びせて、どうにか気を保とうとする。
 といって、有り体は俺の一方的な質問。
 壁打ちテニス。
 一方通行。
 興味のひけない自分につくづく愛想がつきる。












 リポDなんぞを買ってみる。
 なにゆえあたしが「ファイト一発」にすがるのよ、と思う。
 


 ☾☀闇生☆☽


 貧すりゃ鈍する。
 鈍すりゃ貧する。
 これは悪循環である。
 人の気持ちの離れ具合も、加速する。
 うとうとしてたら「煮込まれ」という言葉が頭の中に残されていた。
 なんだろ。
 「見込まれ」たいのに。
 当面は、不安との闘いかな。
 揺れるつり橋の上で。