壁の言の葉

unlucky hero your key


 唐突にイエ電(固定電話)が、鳴る。
 あるはずのないことだし、いまどきって感じも否めないわけだもんだから、闇生は子犬のようにびくっとなるのだ。
 こわいっつの。
 尻尾まるめてぷるぷるしちゃうっつの。
 でも再三、鳴る。
 出ませんよ。あたしゃ。
 ここブログでのぼやきなんぞ誰も知らないはずだから、数日ぼやいたこととリンクしているはずはない。
 にもかかわらず、鳴る。


 うっかり出てしまって、聞き分けのない建売営業マンの恫喝まがいの口上を、聞かされ続けた苦い記憶もあるのだ。
 頑として話をやめないので、そのときは受話器をはずしたまま外出してやったのだ。
 なんなんでしょね、一方的なシャベリでコーナーに追い込むあれ。
 目の前に壁を積み上げんだ。
 それはコミュニケーションの壁でもあるでしょーが。
 あたしも昔、営業をかじったことがあるのだが、それは一番やってはいけないこととして教えられたものだ。
 「十」伝えたかったら、まずお客さんの胃がそれを受け付けるだけ小腹をすかしてもらえと。
 せめて「三」。少なくとも「二」。
 吐き出させろと。
 要するに、相手にも話をさせろと。
 最低限、相槌(Yes)をとりつつすすめと。
 反論や質問にはただちに反論でかえすのではなく、Yes,Butで。相手の言葉をしっかりキャッチしてから返球せえと。
 疑問への共感を示してからだ。
 ようするにキャッチボールを成り立たせること。なのに、
 

 アジアの壁。


 そんな言葉を思い出したものである。
 まあ、そんなところだ。あたしに向かって自発的にされるコンタクトなんてもんは。
 

 今日は一日中雨だし。
 お客さんはまばらだし。
 近所の黒猫も、ぬれねずみだ。
 きっとどっかで雨宿りでしょう。


 ♪


 ☾☀闇生☆☽


 鳴ってます。