「こんなの置いてるとこなんて、渋谷中さがしてもほかにないよ」
スパイク・リーの初監督作品『ジョーズ・バーバー・ショップ』。
彼が卒業制作として撮り上げたその作品は当時VHSとして商品化されてはいたものの、知る人ぞ知る、通好みのものだった。
そのパッケージを手に、おっしゃったのであーる。
ICEの宮内さんは。
いや、ひょっとするとまだICEではなかったかもしれない。
場所は渋谷のはずれにあるちっぽけなレンタルビデオ屋。
あたしはそこの店長をやっていて。
面白い映画ほどジャンル分けが困難なはず。という揺るぎのないこだわり、というかわがままを押し通して、陳列はほとんどを作家別に分けていた。
我ながら偏屈であったと思う。
一部のお客さんからは苦情までいただくほどでもあった。
けど、『ゴッドファーザー』も『風と共に去りぬ』も、ジャンルなんてどうでもいいでしょ?
『シャイニング』を単なるホラー扱いにはしたくないのは、映画への愛情であるつもりなのよ。
して、そんなことだから、常連である宮内さんからの言葉はことのほかありがたかったわけ。
はやいもので二年。
入魂の単弦カッティングは、脳髄で喰え。
☾☀闇生☆☽