壁の言の葉

unlucky hero your key


 初めて書いた長編小説は、それこそひねり出すようにして書き上げた。
 断片的なイメージが頭の中でうぞうぞと蠢いて、生み出してやらなきゃ、とそう思ったのだった。
 題して、


『あかりの匂い』


 その物語には、ある少女が登場する。
 ゆえあって視界を捨てて、父親と廃校に住んでいる。
 彼女が音楽室の足踏みオルガンで、つまびくメロディー。
 それをイメージして曲をつくったことがあった。
 いうまでもなく、うぞうぞに負けて。


 先日、その旋律を思い出してやろうと、ふと部屋のクラビノーバを掘り起こしてみた。
 さっそく指の記憶にすがってみたのだが、肝心のブリッジがわからない。
 マイナーのワルツで、上昇していく音階のイメージは覚えているのだが、はてさて…。


 さぐるうちに違う展開部がひょっこり出来てしまった。
 もうけもんである。
 おかげで小説のイメージからは遠のいたが、耳には残るぞ。
 ジョギングをしながらリズムアレンジを組み立ててみたぞ。 
 これはあれだな。
 テクノ・フラメンコ。
 でもって、ワルツだぞ。

 
 それはいいのだが、
 演奏してくれる人がいないぞ。
 ひとりぽっちはこれだからやるせないぞ。
 パソコンにでも打ち込もうぜ。
 イエーーーーイ!!!
 そうおもったが、聴いてくれる人がいないぞ、と。


 にしても眠い。
 さぶい。
 


 
 ☾★闇生☀☽