壁の言の葉

unlucky hero your key


 おそらくはホームページ上の案内が、不親切なのだろう。
 そこは大いに反省して改善すべき点であるのだが。
 といって住所をさらしているのだからケータイのMAP機能だのを併用してくれれば良さそうなものを・・・・・・。おっと立場を忘れて口が滑ってしまったわい。・・・・・・なかなかそうはいかないもので。
 ともかくだ、
 本業のエロ屋では、よく店舗までの道順の問合せがある。


「どう行ったらいいの?」


 都心に構えた店舗であるにもかかわらず、はるか青森から問合せを頂いたこともあった。
 静岡からもいただいた。
 週末に行こうかと思うんだけど、などなど。
 ありがたし。
 んが、
 こちらの界隈には初めて足をのばすというのだな。
 ううむ。
 だもんでそういうときは、ともかくも最寄り駅まで着きましたらまたお電話下さいと伝えている。
 この時点で具体的に説明したところで、無駄だもんでね。ええ。
 でしょ?
 さて、最も多いのがこの最寄り駅に降りてからの問い合わせなのであるが。
 案内するこちらがわとして知りたい情報はただひとつだ。


『あなたが今何処に居るのか』


 それを知らずしてどうやって導けるというのか。
 ところが、道に迷ったという動揺がそうさせるのか、プチパニックになっておられる方が、実に多いわけであり。
 あろうことか、あるまいことか。道を問うているのに、こちらの返答を聞かないのだからたまらない。
「迷っている」
 という非常事態によるストレスを一方的にぶちまけたがっているだけで。なおかつ、そんなコミュニケーションの一方通行状態に気づきもしない。
 質問の連打で、回答を塗りつぶしてしまう。
 こちらの説明の上からまた喋り出す。
 困惑の度合いをひたすら投げかける。
 んで、
 一方的に「またかける」と通話を打ち切る。
 たのむ。
 おちつけ。
 おちつけ。
 エロは逃げないし。
 周囲に何が見えるかを訊いても、要領を得ない。
 マックがある。松屋がある。とか言われたところで、それらは駅周辺にいくつもあるのだし。
「大きい通りがある」
 これも同じだ。
 仕方なく、近くに番地を書いた看板はありますかと問うたのだが、なんと「無い」とおっしゃる。
 断言である。
 迷っている、という自己暗示が盲目にさせている。
 んなアホな。
 それでも、どうにか目印となる大きな交差点に辿り着いた、としよう。で、大概がこうだ。
「この交差点を、右? 左?」
 これもおそらくはパニックによって客観的視点を失っておられるからなのだ。
 そのお客様が交差点の何処に、どの方角を向いて立っているのかによって、導き方は違うわけで。

 
 つい先日のこと。
 某TV局の某人気バラエティー番組のスタッフが、罰ゲームのアイテムとして鼻フックをお買い求めに来店された。
 そのときも上記のように電話にて道案内をしたのだが、さすがに彼はなれているらしく、
「今〇〇の交差点に居ます。△△電気店を右うしろにして立っています」
 とのこと。
 なーる。
 それなら「そのまま進んでいただきますと、すぐに右側にファミマが見えてきまして・・・・・・」と説明も簡単になる。


 しかしまあ、
 これは闇生が問われる側にいればこそ、これほどの上から目線でのたまっておられるのだなと思うのだ。


 自分の居場所。


 それはわかっているつもりで、実はわかっていないのではないのか。
 まずは自分の現在地をつかむ。
 でないと、たとえばあれだな。時節柄にからめて言えば、年始の神頼みもあったもんじゃないだろうに。
 そりゃあ神様だってやんなっちゃうぞ、きっと。
 わかった、わかった。
 おまえさんの希望する土地はよっくわかった。
 してそこへの道順じゃがな……。
 そもそもお前はどこにおるんじゃとね。
 希望やら、
 理想やら、
 目標やらの側はあなたを見つけたがっている。
 なのに、当人が現在地を把握せんことには、捕まえようにも捕まえられない。
 ね。
 求道とは、そういうことじゃないのかね。
 違うのかね。


 人生の、
 社会の、
 会社の、
 学校の、
 友人関係の、
 地域の、
 あなたは今、どこに居るとですか。












 ☾☀闇生☆☽


 かく云うあたしゃ、迷ったっきりです。
 はい。
 上下左右のままならない、
 前後不覚をたしなむ闇の中。
 せっかくなので、そんな迷宮を愉しんどいたろかと。
 どうすか?
 ご一緒しませんか?