筋力がある方が表現の幅、可能性は広がる。
けれど、やたらめったらに鍛え過ぎてムッキムキになっちゃうと逆効果で。
それはあくまで見せる筋肉であって、芝居をする筋肉じゃないじゃんと。
表現には柔らか〜い筋肉こそが理想的なんだと。
それは力も柔軟性も備えているから、情けない体にもなれるのだ。
野田秀樹がそんな意味のことを発言していた。
松尾スズキによる対談本『演技でいいから友達でいて』でのことである。
これを受けて松尾は「情けない体を作るって、難しいんですよね」と返している。
すべてを笑いに賭けていた。
いや、笑いこそが一番だと、
野球選手でも俳優でもなく、
お笑いこそが一番かっこええ、としていたはずの松本人志の日々隆起していく胸筋の哀しみは、そこにある。
言わずもがな、笑いにとっての「ええ動き」にも、敏感な彼のことだ。
上記のことは十分に承知しているはずで。
ゆえに思ふのだ。
演者としてのお笑いを見限ってしまったのか、と。
もう情けな〜い役はしないのかと。
裏庭の腐りかけの馬のような役には、もうお目にかかれないのかと。
あの怒った胸筋に、ぷちぷちと発散させざるを得なくなった孤独の巨大を、思ふ。
☾☀闇生☆☽