壁の言の葉

unlucky hero your key


 朝の四時からコンビニへ。
 今朝は自炊をサボる所存であーる。
 さて、
 昨今は深夜、早朝でも女子が働けるようになっているらしく、我が贔屓のセブンの夜勤でもうら若き女子が未明の搬入ラッシュを切り盛りしている。
 ついぞ風邪マスクを外したことのない、タッパのあるバレーボール選手風の方だ。
 もちまえのテキパキが、その抑揚のない言葉と見えない表情で、どこかふてくされているかに感じられることがある彼女。
 今朝もそんな対応をされた闇生であった。


 え? イラついてんの?


 実はこのセブン、もうひとりマスク女がいた。
 そのコもやはりちょっと不貞腐れているように感じる時がたびたびあった。
 別に取りだてて指摘するほどのことでもないし、どーでもいいと言えばそうなのだが。
 損してるなあ、と。
 風邪をひいておられるようでもなし。
 ましてや年がら年中風邪を警戒してのことならば、そもそも接客などやめればいい。
 あれは他人のクシャミなどをダイレクトにかぶりますからの。
 思うに精神的に楽なのですな。
 一度その鎧の心地よさを知ってしまうと、なかなか脱げない。
 思春期にやけに前髪だけ伸ばしたがる、あの自意識に似ています。
 自意識の密室のなかから世間を見ているような感覚でいられる。
 わかります。
 わかります。
 エロDVD屋に勤めていたとき、そこで手伝ってくれていたバイト君がそうでした。
 拙い理由づけはしていましたが。
 ただ始終そいつと二人きりなので、正直言って不気味でした。
 目しか見えないの。
 会話のリアクションがわからないの。
 で、この方も愛想というものが苦手な方で。
 というか有体にいってかったりーんだろう。
 して、どうやらそれを自覚してもいるらしく。
 んなこんなで武装していると。
 なんならあたしのおやぢぎゃぐにもいちいちリアクションしなくて済むのだし。
 

 べんべん♪


 かつて中東の女性たちがその容姿を隠すブルカだのチャドルだのの着用を強いられているのは、どうしたものかと国際的な反発が盛り上がったことがございましたな。
 なので一応いっておきますが、
 日本の女子が夏ともなればサンバイザーのでかいので顔を隠し、日焼け防止の手甲をしているのは、他者からの強制じゃございませんことよ。
 上記したように異様にマスク率が高いのも、そうっす。
 自発的なもの。
 誰でしたっけ、日本の文化は『恥』に基づいていると喝破したのは。
 羞恥心?
 露骨、モロダシを嫌うのです。
 そう考えると古き良き日本の風情、たとえば格子戸の町並みもまた違って見えてくるわけで。
 かつての吉原などでは料金によって格子が違ったというの知ってました?
 一番低料金の、つまりヤルだけのとこは格子も無い。
 女たちも通りから丸見え。
 そこから徐々にランクアップしていくほどに通りと店とを隔てる格子の数が増えていき。
 最上級の花魁を置く店が、全面を格子にしている。
 ひやかしたちは格子越しに花魁を覗くと。
 とすると、日本ならではの発達をしたAVのモザイクもまた違った見え方がしてくるもので。
 規制によって、というのではない考え方をしてみるのも面白い。
 たとえば顔にもかけますな。日本では。モザイクを。
 当人が晒してもいいっつっても、メーカーが頑として処理したりしますな。
 それに支えられたいやらしさというものが、ゆるぎなくあるのです。

 
 ようするに「いやらしさ」というものも、文化的背景に支えられていると。
 

 未明のコンビニで弁当をもとめるおっさんは思うのです。
 思っていくのです。
 いきますとも。
 いい歳こいて朝っぱらからコンビニ弁当かよ、とばかりの振る舞いによる不愉快を揮発させていく所存なのでございますと。
 はい。
 セブンイレブンいい気分♪

 




 ☾☀闇生☆☽