エロ屋のほうの職場にて。
うちの店舗が入っているビルの別フロアで、空調の工事があった。
ちょっとした修理らしいのだが、
室外機をいじるのにうちの店を職人さんが通過しなくてはならないとのこと。
んなこた、お互い様よ。
まえもってその連絡が入り、約束の時間きっかりに職人さんが現れた。
んが、入店するやあからさまに彼は息をのんだのだな。
お、おぉぉ。。。
店舗の様子は、想定外だったのに違いない。
あいさつをくれ、
さっそく作業に入ったはいいのだが、
おそらくはこちらに気を使っているのか、
あるいはアガッテいるのか、
さながら幼児がおままごとをするかのように、ぶつぶつと独り言をしつつ作業をしている。
このネジが、こうでしょ。
あれが、ああでしょ。
あ。あれ持ってくるの忘れた。
取ってこなきゃ。めんどくさっ。
総髪で、若く、さわやかなあんちゃんである。
が、そこは所詮オスなのか。
出入りするたびに、ちらちらと商品に視線をさまよわせていた。
半日ほどで工事が終了し、
道具類を片付けてあいさつに戻ってくると、
あら。
どうだろう。
キリッとしていた様子が、ふんにゃりとほころんでいて。
八重歯の笑顔もきらきらと。
曰く、
「見学させてくださーい」
どーぞどーぞ。
ごゆっくり。
さっきまでうんこ座りで作業していたあんちゃんが、商品にみとれるうちに素になってゆくではないか。
気づくと両膝を抱えるようにしてちょこんとしゃがみこみ、プラグ類を注視している。
それはまるでショーウィンドウのウエディングドレスに見とれる少女のよう。
拘束具をためつすがめつ凝視している。
ぽおっとなっている。
スイッチ入っちゃったんだ。
つまり、その総髪ってば。あれか。
サムライ的方角からではなく、
そうか。
CrossDresser的方角からいらっしゃったのだね。
つってもその時は作業服のまんまだが、
表情と仕草だけでこうも変わるのかと、あたしゃおったまげた。
お前は噺家かっ。
で、
最後にまた丁寧なあいさつをくれて帰って行かれたわけが、それはもう最初の「うっす」的なものではない。
颯爽としつつも頬を赤らめて恥じらうボーイッシュなオネーサンのそれでございましたと。
実のところ商売柄、そういう方々の来店も少なくなかったりする。
見るからに職業女王まるだしの方とかね。
コートの中が亀甲縛りなご婦人とかさ。
けれど、このたびはまったくの不意打ちだもんね。
まさか、威勢のいい職人さんが、目の前で変化(へんげ)するたあ、まったくもお。
してやられた。
抜き打ちにされたよ。
にしても、あいさつってのは武器だね。
気分がいい。
談志のお辞儀が天下一品なのは、有名ですな。
☾☀闇生☆☽