貸してください。

 都心の夜勤現場。
 尿意極まって、近くのコンビニに駆け込むと、
「貸してません」
 と、にべもない。


 国道沿いにみつけた別のコンビニのトイレには『故障中』と張り紙がされていた。
 うそつけ。
 都心の夜ではおなじみの光景である。
 じゃあ店員はどうしてるのだと、こっちゃそんな疑問を抱く時間すら惜しいのだ。
 

 おしっこ、おしっこ!
 


 思えば酔いどれ天国、新橋から遠くなかった。
 そういう風土的な事情から、時間的に劇的に下がる民度への対応策が必要なのだろう。
 時給では割に合わないレベルの修羅場が、その個室に展開されるのであろう。
 実際、別の街の深夜のコンビニで、阿鼻叫喚な惨状に出くわしたことがある。
 足の踏み場もなかった。
 あれ、ほっといて奇麗になるものではないわな。
 だれかが、歯を食いしばって処理しているのにちがいない。


 それこそ浪花節だ。


 そんなこんなで、
 夜ともなるとトイレを一切貸さなくなる地域がある。
 示し合わせたかのようにそうなる。
 んで、
 酔客相手に問答するわずらわしさからのがれるための方便としての『故障中』なのだ。
 苦肉の策。
 「貸してません」
 では角が立つもんね。




 わかるわかる~!(^^)!




 などとのたまっている時間もない。
 尿意どん。
 終電間際の地下鉄の駅へと駆けおりる。
 階段をおりるその振動すら、ああ悩ましい。
 最終をアナウンスしている若い駅員に頭をさげた。
「トイレ貸してください」
 どうぞどうぞと改札を通してくれ、場所を教えてくれた。


 帰り際、礼を言うと、
「遅くまでお仕事ご苦労さまです」
 と逆に頭を下げられてしまった。
 いまどきあやういほどの好青年である。
 かたじけなし。
 洗い忘れた手で軽く敬礼を返す。


 地下鉄の青年に幸あれ。


 


 でだ、
 問題はこんな街にもオリンピックが来るということ。
 それなんだな。
 

 数年前、都内の地図を買った。
 いまどき紙の地図をひろげる機会などそうそうないのだが、うん。買った。
 ケービを始めたころから使っていたのが、いいかげんぼろになってしまったのである。
 行く先々で気づいたスポットを手書きでがしがしやらかす、そんな楽しみ方が紙の地図にはある。
 んで、
 新版と旧版。なにげに見比べておどろいたのがこの件なのだ。
 公衆トイレの表記が激減しているのであーる。
 すわ一大事、と焦燥した。
 んが、じっさいに撤去されているのではない。
 多くが表示されなくなっていることに気がついた。


 これもあれですかね。
 地域住民からの突き上げやらなんやらがあったのですかね…と。
 









 ☾☀闇生★☽