壁の言の葉

unlucky hero your key


 どいつもこいつも使えねえ、
 そう思うのは、まず十中八九てめえの使い方が下手なだけではないのか。
 どいつもこいつも、なわけは無いのだし。
 大概に置いて説明が下手なだけで。
 ただそれだけで。
 で説明が下手な人というのは、自分の説明や指示が第三者からどう聞え、どう感じるのかという想像力が欠落しているもの。
 もしくは想像力を使っていない。
 使おうとしていない。
 概念がない。
 自分からの眺めしか持たない。
 演技力が無い。
 つまり自分を演出していない。
 問題は文章の組み立て、比喩、要点整理の問題だけではなく。
 それを話すときの表情やゼスチャーや声のトーンまで含めてのことね。
 そこまで入れて、情報なのです。
 それを言ってます。あたくしは。
 真っ裸の正論を投げつけるだけでは、通じないものなのだ。
 必須栄養素のサプリを手づかみで突き出しても、受け付けてくれないことはままあるわけで。
 てか大概は心を閉ざすもので。
 ならばお握りやサンドウィッチにしてやるほうが、すとんと胸に届いたりする。
 渋めのお茶や熱い紅茶でも添えてやれば、サプリだけでは得られないナニカが摂取できたりすることでしょう。
 そしてそれには相手のレベルに合わせるという視点が肝要かと。
 んなのめんどくせえ、
 という横着が、さらなる「使えねえ」を生んで、結果まためんどうなことになるわけだ。




 曰く「さっき言ったじゃん」




 出会いからして相手からの果実を望んでもそうはいかない。
 素人ならなおのこと。
 耕し、水をやる手間暇は、絶対に要る。
 つかえねえ、の人たちはやたら金銀飛車角を手元に欲しがる。
 そりゃそうだろう。
 けれど、金銀飛車角がそろっているなら、リーダーはお前でなくてもよくはないかい?
 誰にだって統率できやしないかい?
 いいのかい? それで。
 歩や香車や桂馬をどんだけ効果的に使うか。
 状況次第では金に成らせられるか。
 そこだろう、人を使う醍醐味は。
 して使われる側が仕事の面白さを知ってしまうのは。



 


 以上、
 派遣風情が、能書きを垂れ流した。
 いやなに、
 図面を使った現場の説明をね、煙草を吸えないあたしを捕まえて、咥えたばこでやらかされたのですわ。室内で。
 どんなに力説しても、入ってこないっつの。
 けむいけむいけむいけむいけむ。








 ……い。




 追伸。
 その人の人生が刻まれているような、稀にそんな笑顔に出くわす。
 あえて意地悪く言ってしまえば、力瘤のような笑顔。
 長年の風雪で鍛えて勝ち取った笑顔だ。
 若い頃、そういうのを営業スマイルとして忌避していた。
 親戚が意味も無く微笑みかけてくる、アレね。
 ご多分にもれず「心のままに」的な態度のみが、正しいと思っていたのだ。
 思わされてきたのだ。
 で、この歳になって思ふのだ。
 なんでも表情に出してワタクシを甘やかして生きて来たやつの顔って、中年になって愕然とした差が出ると。
 若い、老けてる、というモノサシの話ではなくてね。
 笑顔の力瘤。
 これが消極的保身の結果ではなく、積極性によったものならば、こういう人たちの底力は、つええ。

 

 ☾☀闇生☆☽