西荻ニヒル牛の恒例イベント『旅本展』。
開催日に駆けつけたが、その時点でお目当てのココマコムーンの新作は納入されていなかった。
創作中らしい。
ならば近くまできたらまた覗いてみよう、などとその日はあきらめて帰った。
そんな気ままにぶらりと立ち寄るのがニヒル牛のたしなみかたであり。
門戸は常に「たら」or「れば」オッケー!な店。
などと、勝手に決めつけていたのだが、部屋に戻ってひとりになってはたと思ったのだ。
入手しそこねちゃったら、どうしよう。
どーしよーもこーしよーない。手製本なのであーる。
ましてや、ノルマとか、注文をうけて創作することからほど遠いところの住人であると決めつけてしかるべきところのココマコムーン女史ではないのかと。
彼女にとって書くことは本業じゃねえし。
ならばそんな行きずり野郎のために時間を割き、手塩にかけて復刊する義理なんて、微塵もないだろうにと。
空振りに終わって店を出ようとしたとき、そのココマコ本の予約電話に対応する店主の受け答えが耳には残っていた。
「あ。キャバクラ編ですね?」
前作までにココマコさんは浮世を流れ流されて、ついに歌舞伎町へと辿り着いていた。
ゴールデン街デビューし、
そこへきて『キャバクラ編』である。
予告編と銘打ったチラシには「ご指名どうもありがとうございます」とある。
くそっ。のがすものかっ。
突如として血が騒ぎ予約を入れたのであった。
その甲斐あって、ようやっと日曜に手に入れたのであるが。
あっというまに読破してしまった次第で。
嗚呼、脳が熱い。
回を重ねるにつれて次第次第に文章もこなれた感がましており、
それがまたファンにとってはあやうさと感じとられ、
ああ、もうこれ以上うまくならないでおねがい、などと不届きな思いもしたりしたのであるが、
読み始めてみればあれよあれよと止まらねえ止まらねえ。
でもって、濃いっ。
あついっ。
コーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』の異様に詩的で長い長いセンテンスに煩わされていたところであっただけに、そりゃあもう、あれよ。
殺戮と狂気に干からびちまった闇生の脳みそに、じゅうじゅう音を立てておれもおれもと言葉が飛び込んできやがんの。
この『キャバクラ編』を読んでいて思ったのだが。
唯一無二と認めたうえであえてココマコムーンの類型を求めるとするならば、それは誰だろう。
辛酸なめ子だろうか。
けれど辛酸さんはプロとしての書き手でもあるからして、当然その行動は取材という動機がどこかに作用している。
有体に言えば、ネタさがしが伴ってのことだ。
そこいくとココマコムーンはちがうわな。
旅本展のために引っ越ししたり、ゴールデン街に勤務したり、キャバクラの体験入店を試みたりはしていないはず。
おそらくは心の赴くままに。
ここであたしなんかがおすすめしたところで、はて、店頭に残っているかは甚だあやしい。
ううむ。
でも、おすそわけしたいなあ。
水曜までですって。
☾☀闇生★☽