日本人の大半は、理性ではこの戦争に勝てるわけがないと考え。
一方で感情的には、まさか負けるはずなんかないと思っている。
昭和20年8月10日。
医学生だった山田風太郎は、こんなようなことを日記につづったのだそうだ。
(12/18付産経新聞『次代への名言 受難と復興の日誌編13』)
おそらくは『戦中派不戦日記』からだろうか。
そしてまもなく敗戦となり、
それからあとは、みんながみんな口をそろえて「騙されてたんだ」と、した。
かつてレンタルビデオ屋に勤めていたとき、
その会社の会長が元軍人だった。
軍艦のコックとして文字通りアジアの荒波をかいくぐってきたわけなのだが。
戦時中のことについて話題を振ると、彼はきまって笑いながらこう云ったものだ。
「バカバカしい。テンノウは神だなんて思わされてたんだから」
要は、騙されていたと。
ここでの神は、唯一絶対神のような存在を指すのだろう。
そこで、本当に本当に神だと信じ込んでいましたか、と問うと。
「バカバカしい。誰も信じてやしないよ」
ようするにここには、そういうことにしとけ、という流れがあるような気がする。
原発の村に育った闇生は、
小学生のころ、原発から出る廃棄物について学校で教えられた記憶がある。
それは効力が無くなるまで何百年だか、土中深くに埋められるとのことだった。
だから絶対に大丈夫と。
それで感情的には安心できた。
けれど、頭の隅では思っていた。
この世に絶対なんかあるのかな、と。
今にして思えばそれが、理性のようなものだったのかもしれない。
だからあたしは、連中を擁護もしないが、「騙されてたんだ」とも言わない。
☾☀闇生☆☽