仕事柄、
といっていいのかどうか分からないが、
不肖闇生が勤しむケービという仕事は、昔からバンドマンと役者が多いとされている。
事実、定年退職者向けのケービ会社でないかぎり、その比率は他と比べて多いのでは。
と、
なんの根拠もなく、実感だけで決めつけておこう。
んで、
そんなこんなで、
今日もバンド青年と現場をともにした闇生なのであるが。
彼らに共通していえるのは、やはりそのアツサに相違ない。
ようするに、
俺、本気っすから。
という。
そこらのチャラチャラした連中と、一緒にしないでください、という。
うん。
それは否定すまい。
否定してはならんし。
できないし。
なによりステキやん。
けどね、
たとえばYMOの二枚目まではバイトだと思っていたと発言する坂本キョージュみたいのも、世の中にはいるのよ。
バックバンドはリトル・フィートじゃなきゃデビューしてやんない、ってな矢野顕子とかね。
自分が本気かどうかは、音楽の探究そのものとは別件であると。
いや、
ちがうな、
本気をわざわざ自覚するまでもないくらい、音楽のなかにどっぷりと棲んでいるという。
つまり魚は、わざわざ己が泳いでいるということを自覚しないだろうというやつね。
そんな人もいます。
います。
そもそも思うに、本気かどうかってのは所詮は自己申告ですから。
社会では通用しないのです。
「これ、本気で作りました」
とラーメン屋のおっさんに熱弁されても、まずいものは、まずいように。
と思ってしまうほどに、あたしゃオッサンなのであーる。
だども、その『本気』か否かを価値観の重しにしているところが、君。
ちょっちまぶしかったっすよ。
若いねっ。
輝いてるねっ。
おっさん、あられもなく、もんどりうって照れちゃったわ。
それはともかく、
そんなわけで、成り行き的にこんなベタな質問を繰り出すことになってしまうのだな。
「で、どんなジャンルやってんの?」
嗚呼。
言いつつ、実は空しい。
というのも、
あたしゃ音楽はともかく、映画も小説もジャンル分け、というせせこましい足枷をすまいとしているわけでえ。
むろん、
それがゆえに、系統立てた観賞ができず、
よって、頭ん中がすこしも整理されないわけで。
言わずもがな、そんなやつに勉強などできようはずもない。
事実、出来なかった。
出来そうな匂いすら、醸し出すことができなかった。
有体に言って、もてなかった。
しかしながら、ビデオ屋に長年勤めていた経験から、厳密なジャンル分けなどできる作品などないし。
たとえあっさりとレッテル張りが出来てしまう作品があったにせよ、それは表現の死亡確認であると見なすあたしだ。
エロ屋に来て、確信を固めたよ。
決定されれば、表現は死ぬと。
流れ続けるうちは、水は死なないように。
良い表現は、繰り返し観賞され、
その都度、捉えなおされていく。
と、常日頃からそんなのたまいをしていながら、じゃあなにゆえ訊くのかって?
「どんなジャンルやってんの?」と。
すまん。
今日の君、ホントにすまん。
こっちも社交辞令なら、君だって社交辞令だったに違いない。
けどね、
意表を突く答えが、ひょっとしたからあるんじゃないかって期待も、鼻毛の実ほどは抱いているわけでありい。
「女体盛りっす」
ははん。
なるほどお。
と、そこはひとつ躊躇なく知ったかを決めたいじゃんか。
人肌の刺身って、まずいよねと、
けど、そんな音楽もあっていいよね。
だって女体盛りだもの、と。
並よりは、盛りだよね。
ね。
実際はというと、聞いた事のないジャンル名をのたまわれ。
挙句、グランジか発展したやつです、とオッサン向けに翻訳され。
なんのことはない、結局はまたしても細分化でござるかと、密かに高をくくったあたくしだ。
そんな狭っ苦しいところに逃げ込まれては、どうしようもない。
どうせそこもまた細分化されるなり、隣近所と統合化されるのだしょ?
ねえ。
だしょ、って。
そんな窮屈な服、脱いじまえよ。
カテゴリーなんてレッテルは、あとからついてくるんだっつの、
とは言えず。
うん。
安酒に酔うのです。
☾☀闇生☆☽