塔島ひろ美編『大安の日はあんぱんを食べる(増補版)』読了
車掌文庫シリーズ②
西荻窪ニヒル牛通販*1にて購入。
大安の日にあんぱんを食べるといいことがある。
という出所不明の迷信を実証せんとして、大安の日にあんぱんを食べつづけた記録だ。
この思い込みの具合に、芸があった。
おもしろいのは編者が周囲の人々にもそれを義務化し、レポートを提出させているところだ。
たちまちテーマはちょっとしたプロジェクトといった態をなし、公然の秘密めいてしまう。
実行すれば、いまごろあいつもきっとあんぱんを、そしていいことあっただろうか。といった具合に暗黙の連帯が生まれるのではないのか。
あんぱん。
なぜにあんぱんか。
で大安なのか。
酒飲みのおっさんのあたしの場合は日常ほとんど口にすることはなくなった。
んが、
昭和の刑事ドラマの張り込みシーンではなぜか同僚刑事からあんぱんと牛乳の差し入れがあるというのがステロタイプで、コントでは定番であった。
張り込みにあんぱん。
やはりあんぱんは秘密めいている。
秘密はあんぱんが握っている。
ぱんに握られた実体はせいぜいのところあんこに過ぎないのであるが、そこをあえて秘匿することで成立するその存在自体が、なぞだ。
なぞは、生地とあんこの比率、それぞれの出来、不出来、質感、材料の違い、配分、調理法、添加物などなど、その無限の組み合わせの妙によって成立している。
これを読んでからというもの、コンビニなりパン屋なりの行く先々ではあんぱんを探している。
たべもしないあんぱんをじっと見ている。
闇生