壁の言の葉

unlucky hero your key

真夜中の散歩。

 明日も仕事は無し。
 ひと気のなくなった未明に外の空気を吸いに出る。

ミスタードーナツ


 日中、ミスドはテイクアウトのみの営業だと知る。
 あたしゃ仕事がなければ日中の外出は可能な限り控えているので、はじめて知った。


すき屋


 右の方の光の塊は地元の『すき屋』。
 店員さんも孤独な時間を過ごしていることでしょう。


ポスト


 郵便ポストも塞がれておりました。
 キー局で感染者が出たとのことで、保健所のご指導により云々の貼り紙。
 ポストが閉鎖されるというこの事態、未だかつてあっただろうか。
 戦時下でせえも、ポストは機能していたのではないか。
 むろんコロナとはいえ配達業務は続行しているのでしょうが。



 当然のことながら、自販機はすべて通常営業でした。
 健気です。
 子供のころ、郷里では深夜営業しているのは自販機だけでした。
 カップ式のホットコーヒーの自販機が地元のスーパーの店頭に設置されて、真夜中にこっそり家を抜け出してチャリンコで飲みに行ったものです。
 スーパーもそのころは20時閉店でした。
 それからカップヌードゥルの自販機*1ね。
 あれ、発売当初はフォークで食べるスタイルを日清は推していて、
 一向に定着しなかったけれど、自販機にはフォークの取り出し口がありましたっけ。
 戦後の欧米かぶれの若者へのアピールだったのでしょうか。
 透明のプラスチック製のフォークで、立ったまま食べるスタイルという売り。 
 それもすぐ割りばしにとって代わりました。


 大体において企業からのスタイルの提案というものは外れるものです。
 オロナミンCに生卵を入れてシェイクする*2とか。
 家庭でスープスパとか。
 健康器具もそうでしょう。
 茶の間に常備させようとあの手この手で宣伝してきましたが、定着したものはほとんどない。
 スタイリー*3
 ぶら下がり健康機。
 ロデオマシーンなどなど。
 粗大ごみの日に、いまだにこいつらを見かけます。


 コンビニが執拗につづける恵方巻のキャンペーンというのも長いけれど、どうなんだろ。
 ねばり勝ちするのかな。
 もとは関西圏の風習として土着していたものなのだから、そのうち日本人全体に一般化していくものなのか。ダウンタウンが広めた関西弁のように。
 しかし、ちゃんとなじむには、独自のアレンジがされなければならんでしょうな。
 そのためには元の風習や文化から切り離さなくてはならなくなるでしょう。
 洋食やカレーやハロウィン、クリスマスがそうだったように。
 本場やオリジナルを絶対視する人は日本人のそんなとこを嫌いますが、あたしゃ逞しさと解釈している。
 たとえば仏教だってそう。
 ラーメンだってウイスキーだって自動車だってそうだ。
 みんなでよってたかって手を尽くして自分たちにあったものにしてしまう。
 元の良さを活かしながらね。

 
 ところで、
 愛称というものも周囲から自然発生的に出て、それがやがて定着してくるのが通常ルートなので。
 称される側が自分から愛称を決めてそれが実際に定着するというのは、難易度が高い。
 人でも、外国人なら自己紹介で愛称を自分から言いますな。
 ニックと呼んでくれ、といった具合に。
 日本人にはなかなかそのやり方はなじまない。
 アイドルの自己紹介でたまに耳にするけれど、信者にも定着しないことがままあるようです。


 たとえば『 BIG EGG 』や『 E電 』という愛称の提案がありました。
 前者は東京ドーム。後者は山手線の愛称で、当時の有名人や識者があつまってネーミングしたのでした。
 愛称なんてものは、頭ひねってつくるもんじゃないのでしょう。
 YMOも、そう略しはじめたのは、彼らからではなかった。
 雑誌のインタビュー記事のなかで、いちいち『 イエロー・マジック・オーケストラ 』と表記するのを避けてのことだった。
 『 池中玄太80キロ 』という大ヒットドラマのなかで、聴いている音楽を問われて長女が「 イエローのパブリック・プレッシャー 」と言うシーンがある。
 まだYMOという呼称が定着していなかったことがそれでわかります。
 それがいまやYMOイエロー・マジック・オーケストラの略だということを知らない人までいるのですから。
 


 逆に、英語としては間違っている和製英語が、普遍的な固有名詞として英語圏に定着したものもあったりして。
 その代表が『 ウォークマン 』。
 製品名が愛称に近いあつかいをうけるという幸せな商品。
 最終的に英語圏の辞書にも載りました。
 

 などと散歩というものは、つらつらと脈略もなく思考の道草を楽しむことにもなるわけで。
 歩行だけが目的ではない
 孤独のたしなみなのです。
 
 
 自販機に話をもどそう。 
 少年時代、
 真夜中の田んぼ道にぽつんとつっ立っている自販機に、なぜか惹かれたものです。
 夏場はそこに羽虫が群れて、あとは蛙の声と遠くの国道を行き交う長距離トラックの音だけ。
 時折、踏切の遮断機がおりる音。
 風が変ると、山に反射した海の音が聞こえてきましたな。
 波の音ではなく、海鳴りとして。
 国道沿いに点在していたエロ本の自販機すらも、真夜中はなぜか寂しげでした。








 コロナ。
 正念場はこれからです。



 追伸。
 たかだかこれまでしてきた腕立て伏せの姿勢を変えただけで、腹筋まで筋肉痛に。
 肩まわり、胸筋の腕側など、筋肉痛祭りである。
 くそ、やりやがったな、とおもしろがっている次第。
 



 闇生