村上龍著『空港にて』感想。

村上龍著『空港にて』文春文庫 読了



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空港にて



 コンビニ、
 居酒屋、
 公園、
 カラオケルーム、
 披露宴会場、
 クリスマス、
 駅前、
 空港といった8つのシチュエーションでつづられた短編集。


 村上龍作品。不肖闇生は多感な頃に『限りなく透明に近いブルー』と『コインロッカー・ベイビーズ』で圧倒されて以来、つねに気にしていた作家のひとりではあるけれど、しばらく敬遠していた。
 『イン・ザ・ミソスープ』も読んだ。
 『69』も読んだ。
 気軽に手に取って寝転んで読めるようなシロモノはまず書かないし、期待と希望に胸を躍らせて「先へ先へ」とひき込んでくるストーリー・テリングも、あるいは思わず頬のゆるむようなユーモアや洒落っ気も少ない作風であると思っている。
 陽ではなく陰の、
 それも闇の底の澱に首まで使って世界を他人事のように仰視しているような、彼の作品には多分にそんなイメージを抱いていて。
 それもSMや暴力、ドラッグといった苦痛と自滅的な快楽を通して描かれるがゆえに、すこぶる重い。
 で濃い。
 だから腰を据えて読もうとする。
 もしもそんな作風で傑作ならば、充足した疲労感に襲われるのは必至だからだ。
 だもんで、年々手が伸びなくなってしまっていた。


 んが、
 今回は短編集ということもあって、つい手を出してしまった次第。
 カバーの文言『村上龍が三十年に及ぶ作家生活で「最高の短編を書いた」』という売り文句に挑発されてしまったのが、なにより大きいな。


 しかし短編集といえども『トパーズ』シリーズで描かれた村上龍節ともいえる風俗の世界を舞台にした退廃観ならば、ぐったりだ。
 なので『性』や『風俗』が現れるたびに警戒しつつ読んだ。
 もうね、あの路線は散々読んだからいいよ。というのが正直な思いだ。
 で、まんまと、手を出して、
 まんまとそこんとこはすかされて、
 まんまと、読後の余韻に浸っている。




 またカバーには「他人と共有できない個別の希望を描いた」とある。
 希望。
 村上龍が希望を描く、か。
 似合わねえ、とか思いつつ、まんまとね。


 闇生