『タイム・リメンバード』感想。

ブルース・ピーゲル監督作
ビル・エバンス タイム・リメンバード』
吉祥寺UPLINKにて


映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』4/27GWロードショー


ジャズ界の偉大な故人の足跡をたどるドキュメンタリーである。
ということは、音源や映像に関しては『あらたに発掘』などと謳ってもいない以上、既出なのだろう。

なのでビル・エバンスの半生にまで興味を抱き、すでに研究本などにあたってきたファンには、物足りないのでしょうかね。
ビル・エバンスは好きで愛聴するが、その生い立ちや家族構成までを調べるほどでもなかったあたしのような『なんちゃって』には、収穫あると思う。

本編は演奏映像にくわえ、
近親者、及び彼と交流のあった、あるいは影響を受けたミュージシャンたちのインタビューで構成されている。


序盤、退屈してしまった。
んが、
スコット・ラファロポール・モチアンと組むあたりから俄然おもしろくなってくるのだな。
やはりこのトリオ時代がもっとも広く愛されているであろうし、当人たちの伸び盛り期でもあるだけに演奏にはなやぎがあってわくわくする。

その後のアクシデントから連鎖するように下降していく晩年と対比的で、映えた。

ところで、
関係者のインタビューのアングルがほぼどアップに終始している。
これが視覚的に単調なのだ。
工夫がほしいと感じた。
その発言をする人物の人となりまでを抽出してこそ、言葉である。

謎多きビル・エバンスという人物像を、公私あらゆる角度から彼に関わった人たちの証言によって浮き彫りにしようという試みは、ある意味、群盲象をめでる(もはや死語か)であり、
そうであるならば、証言者それぞれの背景や風情と言った人物像も、軽視できない。
肩書きをテロップで表示するだけでなく。
といって、ことこまかに紹介するでなく。
全身やその人の生活環境(たとえば部屋、家、ペット、服装など)を背景に写し込むだけでも表現できるはず。

その点は、ビル・エバンス本人の扱いにも言えることで。
そのざっとした生涯はわかったし、感動も多々あったのだが、それは研究本でも表現できたこと。
愛用したピアノや生家、肉筆楽譜、出演していたクラブの今などを多用して、生きた痕跡を積み上げていく演出が欲しかったなあ。

かつて存在した『人』を伝える手段を、もっと四方八方から多面的に試してくれると、よりおもしろくなったと思う。



序盤は退屈でアクビの涙に、
スコット・ラファロ以降は感動の涙に苛まれました。
隣席の青年は、終盤、熟睡しておりましたが。



闇生