ホテルで自炊。

という流れで、
ニヒル牛でこれまでに購入してきた手製本をあらためて整理してみた。
すると、
うっかりと積ん読にしてしまっていたタイトルがあるのを発見。


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平田真紀著『高速バスで美術館の旅』


これは、たぶんあれだ。
同時刊行されたであろう『家からすぐの旅』シリーズの当時最新刊とまとめ買いして、
で『家すぐ』だけ読んで、
その感想をうだうだとまとめてたらそれだけでこれも読んだ気になってしまったのだろう。
まったくもって我ながら十把一絡げな性格ではないかと、面目ない。

『2016年4月発行』

3年も寝かせてたのかよ。
着なくなって何年にもなるコートのポケットに、千円札を見つけたような、なんかそんなお得感だ。

さっそく読みはじめると、またもや一気読みでござった。
この巻の主軸はタイトルの通りバスによる美術館めぐりにある。
しかもあたしみたいな不粋なおっさんには縁遠いガラス工芸がメインだ。
これはあたしにとっちゃ、見えていたつもりでいた見慣れた風景のなかに騙し絵が隠されていることを教えられたような新鮮な驚きがあった。

それともうひとつ。
このあと平田本の重要な一面となっていく『自炊』。
それも旅先での自炊。
宿のそばにコンビニがあろうが、あえて自炊するという遊びが、楽しいじゃないか。

そもそも旅という行動自体が、無駄のたしなみに他ならないわけであり。
ひいては人生という名の旅も、そういうものなのだし。
ゴールはひとりの例外もなくおっちぬことだと決まってんのに、わざわざ道草するんだな。
せずにはおられねえんだ。
ならばだ、
その無駄を楽しんだもの勝ちではないのかっ。

かっ、と息巻いたところで勝ち負けの問題でもないのだろうけれど。
とにかく、ごたくは置いといて、
読みながらモーレツに腹減った。
ホテルで自炊というこのコソコソ感が、どこか背徳の匂いもあって胸踊らせやがんのな。

いま、26時半。
掻き立てられちまった空腹感とたたかいつつ、冷蔵庫の中身と、その組み合わせでなにが作れるかを構想してしまっている。
ううう。
罪作りな本だよ、まったく。



追伸。
巻末のコラム『車内盗難に注意』。
推理サスペンスを読むような臨場感。
照明が落ちて、スポットをあびた古畑警部がカメラ目線で解説を始めかねない展開に。

車内ではないけれどあたしにも似たような経験がある。
失った物の金額や価値よりも、人間への不審と落胆にヘロヘロにされてしまうのだ。
げんなりするよ。
なのでよく言われるとおり『返せば済む話』にはならないのね。


闇生