雨がやんで、電車に乗る。
なんとなく横浜を目指し、横浜に着いて、横浜を歩く。
予定も目的もない。
考え事がしたかっただけである。
部屋にいると、澱んでいくばかりなのだ。
考え事、などというとまるでなにか思考しているようだが。
答えを求めるわけでもなく、つらつらとしているだけである。
さまざまな事柄について「さてどうしよか」と思いを巡らしている。
いかんいかん。
それを部屋のなかでしていても堂々巡りに陥るだけで。
といって、部屋を出たところで答えはでないのだが。
少なくとも風通しはよくなるのではないかと。
体は夜勤ルーティンのまま。
昼間に動くのはしんどい。
眠い。
何も買わず。
何も愛でず。
あそうか。
海が見たかった。
それを思い出した。
横浜あたりで下車して、歩き廻っていればそのうち海に出くわすだろう。
曇天だからこそ、海を見に。
そんな思い付きで乗った電車だった。
結局、どこも目指すこともなく歩き疲れてからやっとスマホでマップをあらためる。
帰ろう。
駅をめざす。
車内。
がっつりとメイクした女子が立ったままスマホのゲームに興じている。
なんかクレオパトラ系な。
操作上、両手を使わなくてはならないらしいが、電車が揺れるのでなかなかうまくできない。
なのでどうやらドアにもたれて存分にプレイしたいようなのだ。
そのドアまわりのスポットはといえば他の乗客にとられている。
駅に着く。
そのたびに揺れが止まるのでここぞとばかりにボタンを連打するクレオ。
しかし同時に乗降があるのでドア周りのスポットに空きはできまいかと抜かりなく隙も狙うクレオ。
うまい具合にスポットを確保できず、肩を落とすクレオ。
落胆の鼻息が聞こえた。
せめてあれくらい没頭できる遊びはほしいものである。
じゃあなクレオ。
と心で言って最寄り駅で降りる。
夜にはまた雨だ。
クレオにも雨は降る。
☾☀闇生★☽