『葛飾柴又 寅さん記念館』柴又にて。

 いつも通り、計画を立てずにぶらりと都心に出て、それから行き先を決めた。
 今週は『寅さん記念館』。


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 記念館にはべつに期待してはいないのだが、柴又という町を見ておこうと思った。
 フェリーニだの寺山だのにはまっていたケツの青かったころ『男はつらいよ』は食わず嫌いにしていた。
 ところがそのフェリーニだのを最初に勧めてくれたバイト先の店長が寅さんファンだったと発覚して、半信半疑で手を出したのがきっかけとなった。


 それはいいとして、はたと気づいたのだ。
 先週は東京江戸博物館に。
 で、そのあとYoutubeでひさしぶりに元たまの知久寿焼を見かけた。
 『あの声は誰?』的なテレビ番組の企画に出演したもので、『ヒガシマルうどんスープ』のCM曲を歌っているご本人さん登場という趣向であった。
 企画のなかでは「え? まさか!」といった意外性をアピールしていたが、どう聞いても知久寿焼以外にない声と節回しなわけで。
 まったく、あいもかわらずテレビというやつは、野暮っちい。
 おきまりの『さよなら人類』の頃の映像をながして「なつかし~い」てか。
 それもいいとして、あたしゃテレビをやめているので知久作曲のこのCM曲をはじめて聞いた。
 うまいっ。
 知久さん、さすがだわ。


 で、そんなわけでたまのCDをぜんぶ引っ張り出してiTunesにインポートした次第。
 前PCの永眠にともない、買い替えた新PCに音楽ライブラリはインポートし直さなくてはならないのだが、日々の怠惰にかまけてサボっておったのである。
 あらためると『たま』、手元にアルバム15枚もあった。
 柳原脱退以前のいわゆる「4人たま」時代の曲がやはり有名だし、人気もあるのだろうけれど、あたしゃ「3人たま」「しょぼたま」時代をそれ以上に愛するのだな。
 滝本が才覚をめきめきとあらわしていく後期は、中・後期ビートルズのジョージを思わせるし。
 アルバムとして傑作も多い。


 たぶんそんな流れが自分を柴又に呼び寄せたのではないかと思うのだな。
 東京江戸博物館の昭和コーナーの団地のにおい。
 それから『たま』がもっている懐かしい、愛しい、昭和の風情。
 寅さんの初期フィルムのなかにある昭和の東京の様子は、十分に歴史資料として価値あるものだし、たしかにそこにあったのに、二度と手に入らないものだ。


 柴又。
 帝釈天の参道は映画から感じていたようなスケールもなく、案外とあっけない。
 こちらが勝手に大きく考えていただけのことなのだが、そのこぢんまりとしたところがなんとも可愛い。
 愛おしい。


 あたしが訪れたのが日曜の昼頃。
 賑わいも、混雑というほどのものでなく、心地よい。
 観光地にはちがいないのだが、雑踏に苛立ちは感じられなかった。
 記念館も素朴。
 とらやのセット。暖簾をくぐって店の奥までいってから振り返った。
 茶の間側から表通りを見る眺めに感動した。
 バツ悪く行ったり来たりして店のなかをうかがう寅さんの姿が、フラッシュバックする。
 同じチケットで隣接の山田洋次ミュージアムも見物する。
 この監督は初期にはハナ肇と組んで汗臭い喜劇を何作も作っていたのだな、と再確認。
 あの汗臭さ、男くささというのは、もう映画にはならないものなのだろうか。


 ふと思う。
 じゃ、黒澤明記念館的なものはあるのかしらと。
 午後はそこに行こう、とスマホで検索したのだが、無いらしい。
 あっても不思議はないと思うのだけれど、動く人がいないのだろうか。



 
 一般500円。
 第三火曜が休館。


 記念館の裏から江戸川の土手に出る。
 晴天。
 風がすこしひんやりと。
 地元の消防署が防災の催しをしていて、家族連れがおもいおもいに楽しんでいる。
 なんとものどかな眺めである。
 河川敷はすっかり整備されて映画のなかのような風情はないが、それでいい。



 ☾☀闇生★☽