いや、
塀の中に慣れてなじんで、
閉じ込められていたはずがいつの間にか守られている、という逆転を考えると『ショーシャンク~』よりは、むしろ花輪和一の実体験による漫画『刑務所の中』だな。うちらの世界は。
映画化もされたけれど、やっぱ漫画のほうがいい。
毎日の単調さ、退屈さから皆こまかいことにばかりにこだわりはじめて。
パイロンの向きだの角度だのとつまらんことでやりあったりしている。
前職のエロ屋のときも、レジのなかのお札の向きを揃えるか揃えないか。そろえるならとぢちら向きで揃えるかで揉めたことがあった。
あほくさ。
あれって囚人たちが畳んだ布団のカドの折り方、その立ち方に神経をつかったり競ったりするのに近いような。
どちらがより細やかかを競う。
それでその微細なこだわりと、ルールのなかに居さえすればとりあえずは食えていける。
束縛を抱擁ととらえちゃえば不自由もリバーシブルに自由と見なせるぞと。楽しんでいけるぞと。
その概念の変換もまた仕合せのコツでしょうが。
つまりまあ、どの世界も五十歩百歩であろうというこった。
塀という自分の所属する世界の外にもまた塀があって、
そのまた外にも、といった塩梅ではないでしょうか。
余談。
お札の向き。
個人の財布のなかは勝手にすればよい。
けれど、向きを気にする人が社会に少なからず存在することは確かであり、
ならば不特定多数を相手にする商売の場合は、そういう人たちを意識することは大切だと思う。
お札でお釣りを受け取ったそのお客さんが、レジ前でお札の向きを揃えてから財布にしまうのを何人も見ているからね、あたしは。
相手がお札の向きを気にしない人なら、こちらが揃えていることにも気づかないだろう。
けれど、だからって揃えて損だとは思わない。
経営者と同僚にはめんどくさい奴あつかいされましたがね。
☾☀闇生★☽