哀しいかなニンゲンというものは自己実現せずにはおられない生き物であり。
それは規模の大小にかかわらず公への接点でのみ達成されるものであって。
家庭や交友関係ですら公の最小単位である以上、人はその願望からまぬがれられない。
とすれば仕事こそは、たとえ世間に賤業と蔑まれる種類のものであっても、公との接点にはほかならず。
ましてや多少なりとも収入が得られるのならば、仕事こそは、公と私の駆け引きと折り合いのステージだ。
ところが、
老いれば大概がステージからおろされる。
どこかあたしらとは接点の無いよそへ、と追い出される。
公との接点のメインストリートを奪われる。
世間は彼に「趣味ぐらい持てよ」と、まるで乳幼児にカラカラを押し付けるような扱いをするが、付け焼刃のような趣味で己の心を活かすには、訓練がいる。
時間がいる。
大げさに言って歴史が要る。
公との接点を仕事一本にしてきたニンゲンが、通行止めをくらい、いまさらよそに公との接点(バイパス)を築くのは容易ではない。
それ以前に、趣味なんてものは外部から強いられるものではないのだが。
言わばそんなカラカラだ。
いくらふっても誰も微笑み返してはくれないのであーる。
それでも彼は振りつづけられるのだろうか。
犀の角のようにただひとり歩め。
趣味もなく仕事に没頭する人を、嗤うな。
嗤ってなにが解決するのか。
趣味を持て?
軽々しくそんなことをのたまうな。
おまえのカラカラがお前の手にあるのは、単に運に過ぎない。
白紙の状態から意志をもってチョイスしたわけでもない。
なんかね、そう思った。
カラカラを持たない人を嗤う人たちがいるのね。
あたしには「奥さんに先立たれたときのために愛人をつくっとけ」みたいな言いっぷりに聞こえてしまった。
そういう生き方もあるにはあるのだろう。
んが、
そんな器用なことできない奴のほうが大概だろうに。
だもんで、あなたはバカで結構。
夢中になれて他者を満足させることもできるのが仕事だったと。
そういう関係に出会っちゃったんだから仕方がない。
とどのつまりが恋だ。それは。
ならばあと先の事なんざ、知らん知らん。
バカでラッキー。
おりこうさんになる必要もなければ卑下することもぜんぜんなーい。
ひきつづきバカで行け。
☾☀闇生★☽