壁の言の葉

unlucky hero your key

都市生活カタログ。

 深夜のコンビニ。
 イートインに居座って、
 泥酔、号泣しながら豚キムチヌードルをやけ食いする水商売風の女子が、休憩中のガードマンをつかまえて身の上話をしている。


 漏れ聞こえてくる言葉の断片から察するに、
 ふられちゃったらしい。
 でその、悲しみとごっちゃになって噴き出てくるおさえがたいコンチクショーの落としどころとして、
 やけ食いを。
 それも彼氏のまえでは遠慮しつづけてきた、くっさいのを。
 肌荒れも肥満もこの際しったことかと、
 ぎっとぎとの脂と、
 ぴりっぴりの塩分と、
 とびっきりの高カロリーでやっつけたるわいと、
 なかば発作的にコンビニへと駆け込んだのにちがいない。


 そして、そこに豚キムチヌードルがありましたと。


 両隣の席はハンドバッグで占拠した。
 結界である。
 なるほど周囲は見て見ぬふり。
 引いて引いて、この失恋の現場に近づこうとするものはいない。


 あたしが主役じゃ。文句あっか、


 のオーラが凄まじかった。
 にもかかわらず、限られた休憩時間のなか居場所をもてあましていたガードマンは、声をかけたのだな。無粋にも。


「隣、いいっすか?」
 
 
 堰を切ったように、とはこのことか。
 そのお相手かららしい着信があるたびにブッチしては、女はガードマンに胸のうちを吐露しつづけた。
 とまらない。
 とまらない。
 




 空がすっかり明るくなって、
 現場からの帰りに店内をのぞくと、まだ話しこんでいたよ。









 ガードマン、乙。
 ふられちゃったコ、乙。







 ☾☀闇生★☽