ふぁぁぁぁぁぁ゛っ!
しきりに雄たけびがしている。
我がボロアパートのどこかの部屋で。
夜が更けて、おっさん同志のおおきな話し声が通りの方から接近してきて、階下のどこかにおさまった。
酔っているのだ。
しかしそれにしてもこの河畔のボロアパートである。
隣人は民生だかなんだかが定期的に訪問する元ホームレス。
べつの部屋には酔いどれの老ガードマン。
他の住人は顔も名前も知らないし、あいさつをしても目も合わせず、せいぜい口ごもりつつ素通りするような人たちである。
自宅に招けるような知人・友人・親類などを持てるようなタマはいない、とあたしゃ決めつけている。
むろん自分をふくめてね。
また、人に見せられるような住まいでもないので若い人はまず寄り付かない。
隣室の騒音にさいなまれるようなことはないが、防音といえるようなしつらえでもない。
みんなひっそりと暮らしている。
おのずと『ひっそり』を身につけてしまう。
だもんで部外者、訪問者があればそれとすぐわかるのだ。
住人側はひそひそと。
訪問側はおかまいなくぺちゃくちゃと。
内容はわからないまでも、話し声がしているくらいのことはわかる。
ふぁぁぁぁぁぁぁ゛っ!
雄たけびは、酔ったおっさん丸出しの大あくびだ。
不思議とうるさいとは感じない。
むしろ、酔えるときに酔っとけと。
飲みかわす相手がいるというのは、宝だものな。
追記。
しっかしまあ、
なんでおっさんになると声帯を使ってあくびやくしゃみをするようになるのかね。
☾☀闇生★☽