壁の言の葉

unlucky hero your key

怒りの

 土曜の夜勤開け。
 その終了間際のごたごたに腹が立って、眠れない。
 車線規制現場で撤収の片づけを手伝っていたら、手が足りず、作業車の出入りをみられない一幕があった。
 というか連中、何も声をかけずに軽トラの鼻っ面でカラーコーンをぶっ飛ばしながら出入りをおっぱじめやがった。
 屈辱である。
 動きを読めなかった自分への苛立ちと、この期に及んでものおのおと休憩を回し続ける先輩たちへの苛立ちと。
 どちらにしてもこの夜はあたしが仕切りという形だったから、もろもろを飲み込む。
 自分に腕がないのだ。
 そして言葉の通じない犬猫を相手にしている、と捉えるしかない。
 ひとりで走り回って規制の中をやりくりしながら片づけたった。


 帰って飲んでも眠気が来ない。
 昼過ぎ、結局は孤立していることを再確認。
 それぞれがそれぞれのポジションを外れることのできない状況ではあったが、無線での気遣いひとつかけてもらえなかった。
 つまり、人気がない。
 リーダー気質ではないのである。
 




 土曜、
 珍しく飲みのお誘いを受ける。
 夜勤を休んであってみることに。
 んが、
 そんな自分だからして、他人があたしと会いたがる理由がわからない。 
 大方、勧誘の鴨葱にでもなっているのではないかと怪しんでいる。





 上京してすぐのころ、
 同郷の友人から飲みに誘われて行ってみると雑居ビルに連れていかれた。 
 なんか布団のセールスで、説明会みたいのに連れ込まれた。
 買うと、それをまた売る権利がもらえるとかの、ねずみ講式のやつ。
 鴨を個別に集団で取り囲んで、やたら馴れ馴れしく、そして不自然なくらいポジティヴに勧誘していくアレ。
 購入を決意すると、コンパ的なあほみたいなノリで囃し立てる。
 塩酸をかけても溶けない、という売り文句のあほらしさと。
 肉布団のようなやわらかさ、というくだりでシモネタをにおわせて鴨男たちから笑いを取ろうとした進行の女のやり口に反吐が出る思いであった。
 セールスの現場での政治とスポーツとシモネタは3大地雷だぞっ。
 んで、
 友人だとおもっていのに、結局はそれかいと。
 中学では同じサッカー部で、
 高校ではバンドで苦楽を共にしてきたはずが、それきりとなったのね。
 



 ☾☀闇生★☽