英雄児
慶応長崎事件
喧嘩早雲
馬上少年過ぐ
重庵の転々
城の怪
貂の皮、収録。
ミステリー仕立ての『城の怪』が印象に残る。
モノノケや幻術の正体が単なる自己暗示であるとわきまえたうえで、その暗示にかまけるヒトの心こそがミステリーであると言わんばかり。
そこが司馬遼太郎らしい。
闇に加えて、暗示と幻覚を誘発する条件として本作では過労を持ちこんでいるあたりが新鮮か。
そのあたりにこの時代にはなかったであろう『科学的』なる概念を読者に想起させてしまい、ともすれば時代の空気を壊しかねないのだが、さにあらずと。
そこに『シバリョー』が『シバリョー』たりえる所以があるのであーる。
実は、司馬はこういったミステリー仕掛けを得意としており、短編『壬生狂言の夜』や『外法仏』、忍術モノなどにいくつも見受けられる。
出世作『梟の城』も、オチへきてはじめてそういう仕掛けであったと気付いた方は少なくないだろう。
本作も読後の余韻、おたのしみにといったところだろうか。
☾☀闇生☆☽