壁の言の葉

unlucky hero your key

 夜勤明けで始発を待つ新宿。
 わずか数時間のために漫喫やネットカフェを利用するのもどうかと。
 といってマックに行くとその時間帯はテイクアウト・オンリーという貼紙が……。
 無情なり。
 仕方なく南口の紀伊国屋一階、漫画フロア前のベンチに座る。
 ホームレス避けのために付けられたひじ掛け。そのひじ掛けのあいだの谷間を、デイパックでフラットにして横になる。
 巡回の警備員に「横にならないでください」と注意される。
 なので、座る。
 姿勢をただす。
 座る。
 星を見る。
 南口の夜間工事の音。
 時折いきかう作業員。
 月。
 次第に寒くなってきて、たまらん。
 歩く。
 歩く。
 その時間帯には何も胃に入れたくないので、松屋吉野家も素通りに。
 歩く。
 といっても寒い。
 やっぱり寒い。
 東口の自販機で味噌汁を発見す。
 購入す。
 またたくまにぬるくなるす。
 飲み干す。
 西口の地下道への階段が開いている。
 下りていくと、棺桶サイズに仕切られたダンボールがそこかしこに。
 ははん、家なき人か。
 と思いつつ、自分も空いたスペースに腰を下ろす。
 ケツ、冷えるす。
 んが、駅が開くやいなや、わらわらとそのダンボール棺桶から人が甦って来るではないか。
 身なりも、そう汚いわけではない。
 彼らは使ったダンボールを畳むと、それを売店の前あたりに重ねては置き去りにしていくのだ。
 真の家なき人なら、そんなことはしないだろう。
 ダンボールといえども財産なのだから。
 彼らダンボール棺の人たちは、始発までの仮眠所として、そこを利用している人たちらしいのだ。
 勤務終了が終電後になる職種なんてものは、山ほどあるわけで。
 飲み屋もそうだろうし。
 あたしみたいなガードマンたちもそうだ。






 世の始発を待つ、に愛を。






 さて、今晩も夜勤である。
 しかも雨だ。
 どうやってやり過ごそうか。




 ☾☀闇生☆☽