ちょいと『シモ』の恥ずかしいことを書く。
同じような悩みをもっている人が少なくないと知ったので。
何年もまえからあたしは『陰嚢湿疹』なるものに悩まされてきた。
すまん。
露骨に云おう。『キン○マ痒々病』であーる。
これ、痒いから掻いてしまうのだが、掻いてる時だけ痒みから解き放たれるからまた掻く。でまた悪化させてしまうという、気が付けばそんなエンドレスなことになる皮膚の病気なのであーる。
そりゃああたしも男である。
心して日中は堪えるさ。
んが、朝になるとシーツの上には、夢うつつに掻きむしられ、壊れて剥がれた表皮が散乱しているという鬱状態が続くわけね。
下手すると血がにじむほどにフィーバーしていることも珍しくなかった。
悩んだ挙句にまずは薬局に行きますわな。
そこはシモの問題だ。こそっと、誰にも知られずに治しておきたいじゃないかと。
これを患った人たちが、その素人判断でやらかす第一歩が
「これ、水虫のような何かの菌じゃないの?」
である。
んで、
羞恥心から具体的な症状までは店員に告げられず、水虫やインキン田虫対応の薬を買って帰ると。
でその夜、
何か爆発したのかと、
股間に炸裂する、もののみごとな激痛に、ひとり沈んだ次第。
撃・チン。
キン○マにその手の薬を塗るという禁じ手というかある種の暴挙は、その昔『ガキ使』でコーナーになってしまったほどの根性試しを必要とされるわけで、それはもう浮世離れした痛みを伴いながらなおかつ患部を悪化させるという救いようのない展開に、男子を陥らせるのである。
でまた掻く。
我思う故に、掻く。
アホである。
夜な夜な痛みに泣きながら薬を塗り、キン○マをおさえる夜。
でそれでもなお夢のなかでフィーバーしていたことを知る朝。
医者が見たら自滅行為としか思えんだろう。
ということで、大概の人たちはここでようやっと専門医の戸を叩くことを決意するのであーる。
担当医が女性でありませんやうに、
などと祈る気持ちで病院を探すのであるが、といって男の先生だからといって心が安らぐわけでなし。
またしても多くの貴兄がここでも二の足、三の足を踏むのではあるまいか。
ついに肚を決めて専門医の前でパンツを脱ぐのだが、薦められるのはステロイド系の塗り薬。
性病や虫でないことが明らかになっただけ有り難いのではあるが、なんせステロイドである。
素人には、正直こわい。
キン○マの表皮というのは、先述した水虫の薬でわかるように、想像している以上に浸透性があるのだ。
そこへきてなんか強そうな薬品名ではないか。
アンドロイドとか。
ハステロイとか。
ロイ・シャイダーとか。
ロイにはコワモテのイメージがありはしまいか。
ありはしまいが先生は云う。
まずは弱いものから試し、経過を見て、少しずつ強いステロイドに変えていこうと。
つまりが強いロイはなるべく使いたくないということではないのか。
ということは弱いロイであっても、そこに不良性が絶無ではないということであり。
シャブやアブリはやらないが、缶ピースなら一日一缶開けちゃうぞってな程度のワルではないだろうか。
その上、また来てくれということである。
またパンツ脱いで、おしげもなくキン○マ晒せということである。
看護婦さんが気を使って立ち去り、簡単に衝立てだけ用意されたその陰で『下』だけ脱ぐ哀しさよ。
どうぞと見ていただく、その服従の様よ。
先生だって好き好んで見たいわけじゃあるまいし。
思い悩み、ええいままよと、ついそれっきりにしてしまうのだな。
そしてまた汗ばむ夏が近づくにつれて、逡巡するのだ。
かゆいかゆいかゆいかゆい。
あるときから、
それとはまったく関係なく石鹸で身体を洗わない入浴法を試す。
半身浴で充分に温まり、それにつれて皮脂が浮いてくるのを洗い流すイメージである。
ついで最近、シャンプーを使わない『湯洗』なるものが頭髪にいいと、とりわけ女性の間で静かに広まりつつあるということを小耳にはさむ。
なんでもシャンプーでは本来毛穴に必要な脂までも洗い去ってしまうらしい。
ホームレスにハゲはいない、などという都市伝説めいたエピソードとあいまっての風潮だろう。
あの異様に頭髪が豊かな五木寛之に至っては、年に数回しか頭を洗わないという。
別にいまところあたしゃハゲてもいないが、妙に納得してしまったので、とりあえず数日ためしてみることにした。
どうせ現場とアパートを、それも自転車で往復するだけの日常だ。
たとえ汗臭かったとしても、それがあたしの身の丈じゃないか。
ここのところ電車にすら乗る機会がないので、他人さまと異常接近遭遇する機会は、無い。
んで、
先ほどの話にもどるのである。
キン○マの話に。
結論を言えば、湯洗をはじめた途端に陰嚢湿疹が治ってしまったのだ。
たしかに皮膚科の先生は、患部を石鹸で洗ってはならないと申して居った。
そしてそれは遵守していたのであるが、いかんせん、身体の他の部分は石鹸で洗う。
頭髪も、入浴のあと洗い場でシャンプーする。
それらはシャワーで洗い流している。
流された上半身の石鹸の泡は、下半身へ下半身へと流れ下って、キン○マをなぶってから落ちてゆく。
そう。我がキン○マは、別れてもなお石鹸水と逢瀬を重ねていたのであーる。
それはもう、しっぽりと石鹸に染まっていたのであーる。
犯人は、石鹸だっ!
めでたし。めでたし。
となればですな、どうしてもシャンプーしたいキン○マ痒々病のお方は、理髪店式に、身体とは別に洗えばいいということがわかりますな。
そして石鹸やボディソープも、ひょっとしたら成分の違うものに変えることで、キン○マにやさしい衛生環境を守れるのかもしれません。
あたしゃまだ試していないのだが、例えば『弱酸性』だとか。
ヤシの実なんとかとか。
なんかロハスな奴とか。
ま、その辺は各自で実験してみようじゃありませんか。
いまだイバラの道を歩み続ける痒々病のアミーゴにあたくし風情がアドバイスできるのは以上の通り。
石鹸をやめなさい、ということ。
直接患部に使っていなくても、悪化させているのですよと。
知らぬ間に遭っているのですよと。
たかだかそこに気をつけるだけで、他人の前でパンツを脱げる人生か、脱げない人生なのかが、はっきりと別れてしまうのであーる。
命短し恋せよ乙女
紅きくちびる褪せぬ間に♪
野郎ならなおのこと、命は平均的に短いんだぞ。
それでは今日はこの辺で。
☾☀闇生☆☽