Brillia SHORTS SHORTS THEATER『夏祭り』&『ひと夏の恋』プログラム感想。
どちらがお勧めかを先に言えば『夏祭り』かな。
以下、ネタバレもちょっと含みます。
盆休みの最終日、久しぶりに横浜みなとみらいへ。
世界中のショートショート映画にこだわったプログラムをかけ続けているこの映画館。
思えば、前回は国際映画賞の受賞作をあつめた企画だったと思う。
その時は、各作品に共通していたテーマは『死』であった。
今回は一時間ずつのプログラムを交互にかけており、テーマがそれぞれ『夏祭り』と『ひと夏の恋』。
前者後者ともに五話でちょうど一時間という構成。
まずは午後一の『ひと夏の恋』プログラムを愉しむ。
『アニマル・ラブ』2011年 アメリカ
『初めての一夜』2012 ブラジル
『過去と未来』2013 フランス
『運命の二人』2012 オーストラリア
『流れ着いた恋人』2013 アイルランド
しかし「ひと夏の恋」どころか五話中の三話がいわゆる「一夜の」それであった。
ショートショートという制約のなかで物語を考えれば、やはり作り手としてもっとも簡単に手を出せる題材なのに違いない。
ひょっとすると普遍的な願望なのだろうか、と勘ぐってしまいたくなるほど、この手の話は印象として多い。
デートクラブを通じてや、パーティでの出会い、そしてナンパ、ひょんなことで、などなど。
結論からいえば、一夜の恋の話はショートショートに向かないのではないのかと思った。
なんせ結局は、
くっつくか、くっつかないかぢゃないかっ。
と、それを言っちゃおしまいだが。
遊びのつもりが本気、とはいえないまでもほんのりと好意を抱いちまって、くそお、でも別れの朝が来て、とかね。
あるでしょ?
で、そのまま離れるせつなさとか。
あるいは走って追いかけて引き留めておめでとさん、か。
などと結末がほぼ決まっているのならば、そこまでの経緯が見せどころとなるのだろう。
しかしこれがきっとムズカシーのだな。
やはりそれなりの説得力を持たせるには、映画の中に時間が要るわけよ。
それと『恋』だなんていうのは、合理性や利便性、損得勘定を度返ししたところにあるもので。
いや、あって欲しいと観客は少なくともフィクションの中には望むもので。
そこをどう表現するか。
また、基本がそうであってこそ、それを裏切ったブラックな展開というものが活きるわけだ。
ところが、その元となる人と人の引力の根拠を、して必然を、単に『一目ぼれ』的なところでやっつけているから、なんだかなあとなってしまうのではないのか。
うまくいっても記号的なコメディとして、が精いっぱい。
だもんでこれら一夜ものの三話は、オチできょとんとさせられてしまうハメになった次第でござった。
毛色が違うのが『流れ着いた二人』…流れ着いた男の名前を、愛の告白に聞き違えた女の話で。
しかしやはりオチが唐突でしたな。
言いたいことはわかる。
わかるのだが、旦那の葛藤があまりにも割愛されていて。
そのショートカットを観客に考えさせる行間、と捉えて欲しいのだろうけれど、布石は打っておかないと単なる『やっつけ』だ。
続いて『夏祭り』プログラム。
『27』2010年 ベルギー
『モグラと海』2012年 ロシア
『初夏』2012年 アメリカ
『レモネード・スタンド』2012年 オーストラリア
『道の真ん中で』2011年 カナダ
最初の『27』が、のっけから小気味よくて。
苛立ちと皮肉に満ちた主人公のモノローグと、街を歩き続ける彼を追う長回しでぐいぐい引きつけてくれる。
『ひと夏の』ですっかりダレていた客席が、一気に沸いた。
続いてこのプログラム唯一のアニメ『モグラと海』。
雑誌の写真で海というものを知ったモグラが、それを見に旅をする話である。
漫画本来の風刺に満ちた作品なのだけれど、それが風刺で終わってしまうところが今ひとつだろう。
静かで神秘的な海にあこがれていたモグラを待っていたのは、海水浴場を埋め尽くす人、人、人の海。
彼ら人間の滑稽さをスケッチ的に抜き取っていくわけだが、残念なことにそこをオチにしてまっている。
問題はそこからではなかったのかと。
単なるスケッチの断続ではなくて、チャップリン的にたとえドタバタでもひとつながりの物語にして欲しかった。
でないと単なる状況説明シーンかと思っているうちに「え? これでおしまい?」となってしまうのである。
現に、なってしまった。
たとえばモグラ同様に雑踏と喧騒に倦んだひとりの子供とモグラが出会って、云々とか。
ベタかもしれんが、そんな風刺の先が観たかったな。
『初夏』。
爽やかな一本。
海外での就職を夢みてアメリカに渡って来た中国の青年。
しかし面接はことごとく不採用とされてしまう日々を送っている。
そしてついに、次の面接で駄目なら帰国すると父と約束をする。
そんなころ彼はひとりの同じ中国系の女性と出会う。
彼女は庭園の設計をしているが、やはり泣かず飛ばずの日々で。
同じような境遇からか、ふたりは引かれ合うことに。
実家が料理店だという青年の手料理を通じて、次第に距離を縮めていくふたり。
しかし……。
とまあ、奇をてらったことは何もないです。
けれど、それをショートショートとは思わせないほどに、しっかりと描いているところが素晴らしい。
とりあえず出遭ったらセックス、という展開にならないのを新鮮に感じている自分を、嗤う。
絵がいい。
役者がいい。
青年はプロレスラーのような、なんかごっついガタイなのだが、顔つきには精悍で優しい繊細さが出ていて、手の込んだ料理を作るという設定にも説得力があった。
そして女優さん。
こういうレベルがごろごろしてるのでしょうか。あっちは。
それともすでに有名な人なのでしょうか。
ともかく、映画のレベルとしてこういうのこそが、先の『ひと夏の恋』に入ってなくてはならないと思う。
『レモネードスタンド』は、そうだな。コメディですな。
客席のあちこちから笑いが漏れていました。
オチでは、沸きましたよ。これ。
あえていえば『アメリ』のコミカルな部分に影響されてます。
ああいうノリ。
『道の真ん中で』
ある夏の日、少女と少女の出逢いと友情みたいな……。
しかしもうちょっとなんか欲しいな。
まさかこれで終わるのかと勘ぐって、片方がすでに霊であるのでは、とあたりをつけてました。あたしは。
結果、ちゅうぶらりんでした。
☾☀闇生☆☽