壁の言の葉

unlucky hero your key





 唐突に明日、お休みとなる。
 こちらの都合など想像だにしないお人。
 その下で派遣やるのも、なかなかに面倒であった。
 急にそんなこと言われても、G.W.ではないか。
 仕事がない。
 現場の終了も、はやまった。
 まあいいや。
 段取りと人の使い方の下手くそな現場だもんで、辟易していたところさ。
 へんっ。
 そもそもツートップという体制は、組織としてやっちゃいけない悪手である。


 ちなみに思う。
 やっぱ若いころから本は読むべきなのだと。
 この現場の元請け社員のまずいところは、その日本語にある。
 まず、主語が抜ける。
 その行き違いによって二度手間、三度手間をやらされる羽目になる。
 伝達に、いちいち余計な情報が入る。
 たとえば元請け社員AとBの間でこんなやりとりがあった。


「昨日、打設したとこ、クラック入って無かったろうな」
「ええとお、昨日クラックセーバーを二度塗ったので」
「入ってたのか、入ってなかったのか」
「二度塗っておいたので。それでえ写真撮ってえ」
「で何。クラックは?」
「入って、……ませんでした」
「入ってなかったのね」
「朝の段階では……」
「入ってなかったのね」
「ええ」


 終日。一事が万事、こんな繰り返しだ。
 ついでに云えばこいつ、この会話の段階でクラック確認はしていないのね。
 まるで、宿題をやったかやらないか親に問いただされ、飲まれたように嘘をついちゃう子供のようだ。



 


 
 気分をかえてニヒル牛に行こう。




 ☾☀闇生☆☽


 追伸。
 にしても、猫って生コン打ったあとが好きだよねえ。
 翌日、ちゃんと足跡が付いてました。
 表面は固まったあとなので、肉球型に土が点々としているだけでしたが。
 現場界隈を縄張りとする、いつも一匹でいるあの黒猫でしょう。
 夜中に悠々と横切っていったであろうその姿を想像して、にんまり。