あのね、
仕事ってなんだっ、つう話なんです。
たとえばね、
コンビニですっかり定番となった揚げ物コーナー。
あるでしょ?
カウンターの一角に設置された保温ケースの実物を指さして口頭で注文する、あれね。
やれ唐揚げだ、
チキンなんたらだ、
コロッケだ、
メンチだ、と各社そのラインナップの豊富さと質を競っていて。
注文すると大概が紙袋か紙箱に個別に入れてくれる。
んで、問題はこれなのだ。
「ソース付けますか?」
拒む方もおられるのでしょうが、まあ付けてもらう場合。
最終的には他の買い物といっしょくたにこれら揚げ物もレジ袋にダンクされますわな。
そこなんだわ。
個別包装されたコロッケやメンチも、付けてもらったソースのプチ袋も、いっしょくたなのであーる。
帰宅して、さて揚げたてメンチでもいただこうかと取り出すと、その伴侶であるところのソースはレジ袋の奥地でひとり迷子になっているのであーる。
もうね、ほぼ間違いなくそういうことになっているわけ。
この生き別れたちっぽけなソースを求め、袋に手を突っ込んでごそごそやらかす浅ましさよ。
嗚呼、おっさん、かっこわるし。なのである。
なんならソース付けたの忘れてて、
こいつはこういうもんなんだ、とそのまま平らげちゃって。
あとあとレジ袋の底にソースを発見したときのあの脱力感。
なんだよ、相方居たのかよぉ、
な罪悪感なのである。
こないだの揚げたてメンチのときなんか、セールスポイントであるところのジューシーさがあふれ出しちゃって、レジ袋のなかがオイリーな事態になっておったぞと。
そこをまさぐってのサルベージ作戦なのだぞと。
仕方なく他の買い物をぜんぶ取り出したりすんだわ。
ううむ。
そう。
想像してないんだ。
これを買った人が、このあとどういう風にそれを使うか。取り出すのか。
けどね、行きつけのセブンでは、バイトの女の子が一人だけこんな感じに包装していたのだ。
わかる?
袋を閉じるストアテープにソースのプチ袋を抱かせてとめてんの。
これならメンチとソース、二人ははぐれないでしょ。
しかもテープも剥がしやすいように端を折り返してとめてんのよ。
そーゆーことでしょ?
こういう想像ができるコは、このあとどんな仕事についても、その応用でやりくりしていくはず。
てか、そうしていけと。
なんせこの店では店長ですら、いっしょくた式ダンクなので。
このひと工夫は、この店でこのコのみだ。
このコのみが提供する、プチ仕合せだ。
たかがバイト。
されどバイトなのであーる。
ついでにもう一人。
帰宅途中に立ち寄るローソン100。
ここにもそんな素敵な気遣いができるコが居りまして。
お酒を買うときの成人確認パフォーマンス、
「画面にタッチ願います」
これのタイミングを考えているのね。
あたしゃ現場にはデイパックで通勤するのだが、財布もそのなかに入れていて。
カウンターでは買い物かごをあずけ、背負っていたバッグをどっこいしょとおろしーの、しかるのちに中から財布を取り出す流れでいく。
その探索作業を、そのコは決して中断させないのだ。
客が財布のなかのポイントカードを探しているときも、そう。
酒類のスキャンを後回しにしている。
他の商品をスキャンしながら、そのタイミングを見計らっている。
いったんこのコのこの気づかいに気付いてしまうと、あれよ。他の店で財布取り出しを「画面タッチ」で中断されたときのちょっち残念な気持ちってのはないよ。
んああ、もおおっ、と。
その残念のちょっちぶんだけ、振り返って、そのコにありがとうだ。
日用品のなかに一個だけお握りとか。
あるいは先述した揚げものだとかを買う人は、すぐに食べる気まんまんでございましょ?
なんなら食べながら帰るつもりですよ。連中は。
ネタは上がってますよ。
ならば一番上に、取り出しやすいようにのせてあげようじゃありませんかと。
そーゆーことね。
聞いた話だが、
どこだかの入社試験で、ガンプラを作らせるというのがあったそうな。
四五人でひとつのテーブルを囲み、それぞれ自分のガンプラを組み立てる。
けれど、接着剤やらカッターやらといった道具類はテーブルにワンセットだけ。
受験生はプラモデルのデキにばかり気をとられるのだが、試験管が見ているのは、実はその道具の方なのであーる。
使い方の巧拙ではない。
独り占めや、使いっぱなしで元の位置に戻していなかったりするのを、減点しているのね。
創作の再現度や、完成度、独創力といった自己管理には口を出さず、自由にやらせて、他者との接点を見ている。
おもしろい査定法だなと、思った。
社会的な出世や成功には直接関係ないかもしれない。
実際、派遣やってると幼稚でだらしない中年社員にばかり出くわすからね。
けれどこれらができる奴は、気持ちのいい奴であることは確かだと思う。
この感覚もまた、
ニッポンジンならではのものだと思ふ。
日本ならではの技術や製品やサービスの根っこだと、そう思ふのであった。
☾☀闇生☆☽